研究課題/領域番号 |
16K09855
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
飯田 真介 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (50295614)
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研究分担者 |
桶本 和男 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 助教 (50415486) [辞退]
前川 京子 国立医薬品食品衛生研究所, 医療安全科学部, 室長 (70270626)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 多発性骨髄腫 / バイオマーカー / 効果予測 / miRNA / 脂質メタボローム解析 / エキソソーム / 遊離核酸 / 分子標的薬 |
研究実績の概要 |
本研究は、多発性骨髄腫に対する新規薬剤(ボルテゾミブ・サリドマイド・レナリドミド・ポマリドミド)の感受性に係る因子を患者由来末梢血血清中の物質の網羅的な探索により同定することを目的とする。これまで骨髄腫患者由来の治療前血清を解析することで、以下の研究を行った。 (骨髄腫患者に由来する末梢血血清の網羅的マイクロRNA解析と健常人との比較) 本研究の目的である骨髄腫治療薬の感受性に関与する血清マイクロRNAを探索する前に、まず疾患特異的な血清マイクロRNAを同定することにより、その後の治療薬の感受性に関連したマイクロRNA候補との比較を行うこととした。まずは骨髄腫患者と健常人の血清マイクロRNAの発現解析の比較を行った。具体的には、健常人15名・初発骨髄腫患者10名・再発難治骨髄腫患者52名の血清のマイクロRNAを次世代シークエンサー法にて発現量の解析を行った。検出された200前後のマイクロRNAのうち、32個のマイクロRNAが健常人と比べて、骨髄腫患者由来血清にて高発現していた。さらに、そのうち5つのマイクロRNA(mir-10a, 10b, 92a, 378a, and 378d)が、骨髄腫患者においても再発・難治例において、初発症例と比べて有意に高いことが判明した。これら5つのマイクロRNAは、乳がん等の固形腫瘍においては、細胞増殖・薬剤耐性・転移能などの悪性能に関わることが報告されている。さらに、mir-92aに関しては患者骨髄から採取し純化した骨髄腫細胞を用いた解析で、化学療法の感受性に関わることが後方視的な解析で明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、平成28年度は、以下の項目を中心に研究行う計画であった。 ①末梢血血清中のエキソソーム解析 ②末梢血血清全体の遊離核酸解析 ①に関しては、血清からエキソソームを安定的に単離するための予備実験を、細胞株の培養上清等を用いて行い、全血清のエキソソームから数百ngのsmall RNAを抽出する系を確立した。同時に、治療前・薬剤耐性化後の骨髄腫患者さんの各段階での血清の保存を行った。保存した血清のエキソソーム解析はまだ未施行であるため、予定通りには進んでいないと判断した。 ②に関しては、当初の予定通り、血清中に遊離している核酸のなかでも、small RNAを高い回収率で抽出し、ライブラリー作成および次世代シークエンスを行い、骨髄腫の病態に関わるマイクロRNAを同定できたため、概ね予定通り進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を継続発展させ、引き続き多発性骨髄腫に対する新規薬剤の感受性に係る因子を患者由来末梢血血清中物質(エキソソーム、遊離核酸、脂質代謝産物)の網羅的な探索により同定することを目標とする。具体的には、まだ十分に検討されていない患者さんの血清中のエキソソームを安定的に回収し、マイクロRNAなどのsmall RNAの解析を着手する。また、骨髄腫患者に由来する全血清の遊離核酸の解析では、疾患特異的なマイクロRNAのデータを基にしながら、各個別の骨髄腫治療薬(ボルテゾミブ、レナリドミド、ポマリドミドなど)の効果に関わるマイクロRNAを、各マイクロRNAの発現量と、治療による効果(最良奏効効果や無増悪生存期間・生存期間など)を照らし合わせることで、バイオマーカーの候補となりうるものを同定する。 さらに、遊離核酸のみならず、血清中の脂質代謝産物の解析も行う。具体的には、血清の脂質代謝物を酸化脂肪酸群とリン脂質群に分けて、それぞれ質量分析計を用いてその発現量の測定および構造解析を行い、治療効果と関連性のある脂質代謝産物を同定することを目標とする。マイクロRNAの解析と同様に、まずは疾患と特異的な代謝産物のデータ確立のために、健常人、骨髄腫患者(初発・再発難治)間で、産物量の差異を解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初の予定通りの計画を進めていきます。
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次年度使用額の使用計画 |
予定通りの物品の購入(エキソーム抽出試薬、シークエンス関連試薬)を行う。
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