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2017 年度 実施状況報告書

多発性骨髄腫における分子標的薬の効果を予測する血液中バイオマーカーの同定

研究課題

研究課題/領域番号 16K09855
研究機関名古屋市立大学

研究代表者

飯田 真介  名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (50295614)

研究分担者 桶本 和男  名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 助教 (50415486) [辞退]
前川 京子  同志社女子大学, 医療薬学科, 教授 (70270626)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード多発性骨髄腫 / リキッドバイオプシー / バイオマーカー / cell free DNA / microRNA / 脂質メタボローム
研究実績の概要

本研究は、多発性骨髄腫患者さん由来の末梢血(血漿や血清など)中の物質を網羅的に解析することで、骨髄腫の進展・悪性度の獲得に関わる重要な因子と、治療薬(ボルテゾミブ・レナリドミド・ポマリドミド)の感受性に係る因子(バイオマーカー)を同定することを目的としている。2017年度は主に、血清中のcell free DNA (cfDNA)の解析を集中的に行った。
骨髄腫患者さん由来末梢血血清からのcfDNA抽出とその遺伝子変異解析:当施設において2013年以降に診断された初発多発性骨髄腫患者さんで遺伝子解析研究に同意いただけた約80例の治療前に採取・保存された末梢血血清の解析に着手した。具体的には、血清1mlから、QIAGEN社のcirculating nuclear acid kitを用いてcfDNA相当と考えられる血清DNA抽出を行った。対照として健常者10名の血清からも同様に抽出を行った。健常者10名と骨髄腫患者さん80名を比較したところ、血清1mlあたりのDNA収量は、31.6ng/ml vs 77.0ng/mlと有意差をもって(P=0.015)、骨髄腫患者さんの血清中cfDNAが多い結果であった。また、これら血清中のDNAをバイオアナライザーで解析したところ、mono-nucleosome(150~200bp)、di-nucleosome(300-400bp)、tri-nucleosome(600bp程度)に相当するピークが認められた。80例中、先ず4例の血清DNAをQIAGEN社のターゲットシークエンスパネル(Comprehensive cancer panel)を用いて数百の遺伝子のエクソンをカバーするアンプリコンを作成し解析したところ、およそ5から40か所程度の遺伝子変異が検出された。これからの変異の臨床的意義について解析を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

これまでの研究で、骨髄腫患者さんの末梢血検体から血清中のマイクロRNAを網羅的に解析した。2017年度は、血清中からcell free DNA(cfDNA)を抽出し遺伝子変異解析を進めた。しかし、変異解析実施例は4例にとどまり多数例での解析にはまだ時間がかかる。また、マイクロRNAおよびcfDNAともに臨床的意義に関する解析、すなわち個々の薬剤に対する治療感受性や予後との関連についての解析もまた本格的に着手できていない。cfDNAの安定な抽出方法の確立と、次世代シーケンス法による変異解析系はほぼ達成できているため、臨床情報との関連の解析を除けば、計画していた研究は進捗しているため、全体としてはやや遅れていると判断した。
また血清中脂質分画のメタボローム解析については、分担研究者の異動があったものの各施設での倫理審査委員会承認を得て、検体を既に送付の上解析を進めている。今後臨床情報との関連を解析し、意義のある候補物質の同定を行う予定である。

今後の研究の推進方策

これまでの研究成果を継続発展させ、引き続き多発性骨髄腫の進展・悪性度の獲得や治療感受性に関わる血液中のバイオマーカーを検討する。患者さん由来のリキッドバイオプシーに由来する核酸や代謝物質などの網羅的な物質の探索により、より高い精度で臨床応用できるバイオマーカーを同定することを目標とする。今回、解析に着手したcfDNAの変異解析を多数例の検体で実施するとともに、初発から治療抵抗性に至るまでの経時的な解析を加えて遺伝子変異の推移を明らかにし、各薬剤に対する感受性を解析する。また既に測定データが得られている血清中のマイクロRNA解析においては、各個別の骨髄腫治療薬(ボルテゾミブ、レナリドミド、ポマリドミドなど)の効果に関わるマイクロRNAを、各マイクロRNAの発現量と、治療による効果(最良奏効レベルや無増悪生存期間・全生存期間など)を照合することで、バイオマーカーとなりえる候補を同定する。
さらに、遊離核酸のみならず、引き続き血清中の脂質代謝産物の解析も行う。具体的には、血清の脂質代謝物を酸化脂肪酸群とリン脂質群に分けて、それぞれ質量分析計を用いてその発現量の測定および構造解析を行い、治療効果と関連性のある脂質代謝産物を同定することを目標とする。マイクロRNAの解析と同様に、まずは疾患と特異的な代謝産物のデータ確立のために、健常人、骨髄腫患者(初発・再発難治)間で、産物量の差異を解析する予定である

次年度使用額が生じた理由

理由:研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画内容に変更はなく、前年度の研究費も含め当初の予定通りの計画を進めていく。

使用計画:予定通りの物品の購入(メタボローム解析関連試薬やシークエンス関連試薬)を行う。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Potent anti-tumor activity of a syringolin analog in multiple myeloma: a dual inhibitor of proteasome activity targeting β2 and β5 subunits2018

    • 著者名/発表者名
      Yoshida Takashi、Ri Masaki、Kanamori Takashi、Aoki Sho、Ashour Reham、Kinoshita Shiori、Narita Tomoko、Totani Haruhito、Masaki Ayako、Ito Asahi、Kusumoto Shigeru、Ishida Takashi、Komatsu Hirokazu、Kitahata Shun、Chiba Takuya、Ichikawa Satoshi、Iida Shinsuke
    • 雑誌名

      Oncotarget

      巻: 9 ページ: 9975-9991

    • DOI

      10.18632/oncotarget.24160

    • 査読あり / オープンアクセス

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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