研究課題
【対象と方法】京都府立医科大学で樹立した難治性びまん性大細胞型Bリンパ腫(DLBCL)の細胞株KPUM-UH1を対象とした.方法は,染色体分染法,spectral karyotyping (SKY),double-color fluorescence in situ hybridization (DC-FISH),オリゴヌクレオチドアレイ,RT-PCR,塩基配列決定法,次世代シーケンス解析(paired-end RNA sequencing; RNA-Seq, illumina社HiScanSQ)によった.【結果】KPUM-UH1のオリゴヌクレオチドアレイ解析による再検討ではPVT1増幅を認めた.DC-FISHではadd(8)(q24)とder(14)t(14;16)(p11.2;q11.2)にMYC-IGH融合シグナルを検出し,MYC遺伝子のIGH遺伝子への挿入と診断した.PVT1をはさむ”PVT1-A”と,PVT1のみをカバーする”PVT1-S”の自作プローブを用いたDC-FISHにより,KPUM-UH1の8q24異常切断点をPVT1 exons1-2に同定した.RNA-Seq解析で検出されたPVT1とELK2AP (member of ETS oncogene family, pseudogene) のキメラ は,PVT1 exon1とELK2AP exon3の融合であり,スプライシング異常ではなく,DNA再構成により形成されていた.ELK2APはIGHGP (14q32)の5’側に存在する偽遺伝子でありスイッチ配列は有さず,intron 2にRSS配列を有していた.【考察】8q24と14q32のゲノム融合によってMYCとIGHとは異なる遺伝子に再構成が生じていた.PVT1-ELK2AP融合のメカニズムはRAG-mediated translocationであると推定された. PVT1はlong noncoding RNA (lncRNA) であり,キメラ遺伝子形成によって難治性リンパ腫の分子病態に関与する可能性がある.
2: おおむね順調に進展している
難治性のびまん性大細胞型Bリンパ腫由来細胞株のRNA-seq解析で検出し,RT-PCRと塩基配列決定によって,PVT1キメラの新規相手遺伝子としてELK2AP(14q32)を同定した.このPVT1-ELK2APは,FISH解析から,t(8;14)(q24;q32)により形成されていることが示唆された.しかし,染色体レベルではt(8;14)転座は検出されず,LSI IGH/MYCプローブ(VYSIS)を用いたFISH解析によりIGH遺伝子へのMYC遺伝子の挿入が疑われた.MYC遺伝子の存在する8q24の切断点を同定するために,自作のPVT1プローブによるFISH解析を実施した.その結果,切断点はPVT1 exons1-2に存在することが明らかとなり,PVT1 exon1とELK2AP exon3の融合をゲノムレベルで証明することができた.今回の研究からlncRNAの関与する遺伝子研究の新たな展開が期待できる.
PVT1-ELK2AP キメラmRNAは,PVT1 exons1-2に切断点の存在することが明らかとなり,PVT1 exon1とELK2AP exon3の融合をゲノムレベルで証明することができた.さらに,PVT1-ELK2AP キメラmRNAを多数例の悪性リンパ腫で検索し,難治性悪性リンパ腫の分子病態への関与を解明する.
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)
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