最終年度は、当該研究でこれまで特定している3種の候補標的遺伝子の転写調節がRUNX1による直接的なものか、あるいは他の転写因子群との協調の上に成立しているものなのか検討を進めた。これら3種の候補標的遺伝子それぞれのプロモーター領域にあるRUNX1結合部位に変異を施した変異型ルシフェラーゼベクターを利用し、RUNX1転写因子の候補遺伝子プロモーター領域に対する作用について解析した。まずHeLa細胞やヒト血球系培養細胞中の転写活性化能をルシフェラーゼアッセイにて検討した。その結果、3種の候補標的遺伝子の変異型ルシフェラーゼベクターのいずれもRUNX1によって正方向に活性化された。次に、RUNX1コンセンサス部位に結合しない変異型RUNX1を用いて同様にルシフェラーゼアッセイを行うと、3種とも候補標的遺伝子の転写は活性化されなかった。くわえて転写活性化ドメインを欠くRUNX1変異体を用いた同様の検討を行なったが、ここでもプロモーターの転写活性化は観察されなかった。このことから、3種のこうした転写調節はいずれもRUNX1と他の転写因子群との協調による可能性が示唆された。 次に、これら3種の候補標的遺伝子発現がRUNX1により制御されているかを確認した。RUNX1を強制発現させた細胞及びsiRNAでRUNX1をノックダウンさせた細胞からRNAを精製後、リアルタイムPCRにて相対定量比較を行った。その結果、3種のうち2種の候補標的遺伝子の発現がRUNX1により変化していることを確認することができた。 以上より、他の転写因子群との協調によるものであるが、RUNX1はこれら2種の候補標的遺伝子の発現を制御する可能性が示唆された。これらのことから、3種のうち2種の候補標的遺伝子はRUNX1の新規標的遺伝子であるものと考えられた。
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