研究実績の概要 |
白血病幹細胞は、正常造血幹細胞の階層制と同様に、CD34+CD38-細胞分画に存在すると考えられてきた(Nature 367: 645, 1994)。 しかし我々の提唱する正常造血幹細胞の新たな階層性モデル(Blood 101:2924,2003,plenary paper)に基づいて、CD34-HSCのleukemic counterpartとしてCD34-LSCが存在するとの仮説を立て、骨髄内直接移植法を用いたNOG/NSGマウスへのヒト白血病細胞移植実験によりそれを実証した。 移植実験により白血病を再構成した白血病検体を免疫原として、Balb/cマウスに免疫を行い、回収したマウスリンパ球とマウス骨髄種細胞株(SP2/0)と融合させて抗体産生ハイブリドーマを作製した。これまでにALLに対する3クローン、CMLに対する3クローンのモノクローナル抗体を作製している。これらのうちALLに対する1クローン(303-23)について標的抗原(抗原X)が同定されているが、あらたに別のALLに対する1クローン(303-10)に対して標的抗原の同定を進めている。303-10抗体が強い結合性を示す細胞株KU812を材料として免疫沈降を行い、抗原バンドサンプルを質量分析した。その結果、抗原候補として抗原Yが示された。抗原Yについて複数の方法を用いて確認実験を行ったが、別の抗原であるZである可能性を示す結果が得られている。現在確定的な結果は得られていないが、Zは固形腫瘍治療において注目されている抗原でありさらに確認実験を進める予定である。 303-23を白血病モデルマウスに投与することによりin vivoにおける抗白血病効果を確認した。303-23についてはヒトキメラ抗体の作製、及びCAR-T療法への応用のためのCARコンストラクトの作製を現在行っている。
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