研究課題
本研究では、多発性骨髄腫(MM)の根絶に向けた取り組みとして、未分化な造血細胞分画から、表面分子と疾患特異的に発現する遺伝子プロファイルをもとにMM 幹細胞を同定し、その生物学的・分子遺伝学的な特性や生体内動態を解析する。さらに、MM 幹細胞の増殖、生存あるいは薬剤耐性に必須の分子を標的とした新規治療法の開発基盤を確立することを目的としている。本年度は、申請者らがCD38+19-45-138+で定義されるMM細胞(PhMCs)中に見出した未分化な細胞分画の薬剤耐性機構について、B細胞の分化度、および免疫チェックポイント分子の発現の観点から解析を行った。未分化PhMCs、成熟PhMCsとの網羅的な遺伝子発現比較の結果、B細胞分化に関わる転写因子の中で、Pax5の発現は共に認められなかったのに対し、IRF4、XBP1は、成熟PhMCsで有意に高い発現を認め、PU.1, EBF1, Oct2の発現には両者での有意差は認められなかった。興味深い結果として、未分化PhMCsにおいてのみGATA2の発現を、造血幹/前駆細胞と同程度認めた。これまで実験的に、XBP1の発現とプロテアソーム阻害薬の効果との関連が報告されているが、プロテアソーム阻害薬投与前後の骨髄を用いて、未分化PhMCs、成熟PhMCsの割合を比較した結果、臨床的な奏効に関わらずXBP1発現の少ない未分化PhMCsの残存を認めた。抗腫瘍免疫に関わる表面分子の発現を比較した結果、PDL1, CD155等の抗腫瘍免疫の抑制分子の発現が未分化PhMCs において有意に高く、初発症例よりも再発難治例により多く発現を認めた。以上の結果から、未分化PhMCsは幹細胞活性を有するclonogenicな骨髄腫細胞であり、多発性骨髄腫における新たな治療標的となる可能性が示唆された。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件)
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