研究課題/領域番号 |
16K09863
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
小迫 知弘 福岡大学, 薬学部, 准教授 (40398300)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ATL / Sirtuin |
研究実績の概要 |
成人T細胞白血病(ATL)は、レトロウイルスであるヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)がCD4陽性T細胞に感染した後、約40年の潜伏期間を経て発症する。一方、SIRT2は、α-チューブリン、FOXO及びヒストンなどを基質として、NAD+依存的にこれらを脱アセチル化することで細胞周期やアポトーシスなどの生命機能に関与している。これまで、SIRT2阻害剤は、神経膠腫細胞やHeLa細胞においてアポトーシスを誘導することが報告されている。本研究では、新規合成した低分子のSIRT2阻害剤であるNCO-90/141による白血病細胞株の細胞死について検討した。 NCO-90/141処理により白血病細胞株の生存率が有意に低下すると共に、AnnexinV陽性細胞の増加とDNAの断片化が確認された。またカスパーゼ-3,8,9の活性化が認められたことから、NCO-90/141はアポトーシスを介して白血病細胞株の細胞死を誘導することが示唆された。一方、汎カスパーゼ阻害剤のZ-VAD-FMKは、NCO-90/141による細胞生存率の低下を抑制しなかった。更にNCO-90/141処理によりオートファゴソームの蓄積が認められたことから、NCO-90/141によるカスパーゼ非依存的細胞死が示唆された。以上の結果より、新規SIRT2阻害剤であるNCO-90/141は、白血病細胞株においてカスパーゼの活性化を介する経路と、オートファジーを介する経路を同時に誘導して細胞死を起こすことが示唆された。現在、in vivoでの検討を遂行している。今後、ミトコンドリア機能に対する影響など、より詳細な細胞死のメカニズム及びATL細胞における検討を行い、本薬剤の臨床応用に対する可能性を探索したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の2つの目標に対して、おおむね遂行することができたため。 目標①:In vitro及びex vivoにおける新規SIRT2及びSIRT7阻害剤の白血病細胞増殖抑制及び抗腫瘍効果 目標②:In vivoにおける新規サーチュイン阻害剤の抗腫瘍効果
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今後の研究の推進方策 |
目標①In vitro及びex vivoにおける新規SIRT2及びSIRT7阻害剤の白血病細胞増殖抑:SIRT7阻害剤を用いた検討が未実行である。新規化合物であるため安定供給が困難であるため、準備出来次第とりくめるように、SIRT2阻害剤での検討を先行して遂行したい。 目標②In vivoにおける新規サーチュイン阻害剤の抗腫瘍効果:現在マウスでの検討を遂行中である。可能であればHTLV-1プロウイルス量もあわせて検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスを用いたin vivoの実験において、マウスの使用匹数が当初の計画より少なかったため、次年度以降に使用する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度、予定通り遂行できなかったマウスの飼育管理に使用する。
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