研究課題
成人T細胞白血病(ATL)は、レトロウイルスであるヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)の感染後、約40年の潜伏期間を経て発症する。一方、SIRT2は、α-チューブリン、FOXO及びヒストンなどを基質として、NAD+依存的にこれらを脱アセチル化することで細胞周期やアポトーシスなどの生命機能に関与している。これまで、SIRT2阻害剤は、神経膠腫細胞やHeLa細胞においてアポトーシスを誘導することが報告されている。本研究では、新規合成した低分子のSIRT2阻害剤であるNCO-90/141による白血病細胞株の細胞死について検討した。NCO-90/141処理により白血病細胞株の生存率が有意に低下すると共に、AnnexinV陽性細胞の増加とDNAの断片化が確認された。またカスパーゼ-3,8,9の活性化が認められたことから、NCO-90/141はアポトーシスを介して白血病細胞株の細胞死を誘導することが示唆された。一方、汎カスパーゼ阻害剤のZ-VAD-FMKは、NCO-90/141による細胞生存率の低下を抑制しなかった。更にNCO-90/141処理によりオートファゴソームの蓄積が認められたことから、NCO-90/141によるカスパーゼ非依存的細胞死(CICD)が示唆された。以上の結果より、新規選択的SIRT2阻害剤であるNCO-90/141は、白血病細胞株においてカスパーゼの活性化を介する経路と、オートファジーを介する経路を同時に誘導して細胞死を起こすことが示唆された。NCO-90/141以外の選択的SIRT2阻害剤が、カスパーゼ依存的またはオートファジーを伴うCICDによる細胞増殖阻害効果を示す知見はない。また、SIRT2を標的とした薬剤は臨床応用されていないため、NCO-90/141の患者細胞およびマウスでの更なる検討が、がんに対する新規治療法に繋がる一助となると考えられる。
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