研究課題
本年度は骨髄内の脂肪細胞の増減と骨髄内環境の相関を明らかにした。致死量の放射線照射後にRelA欠損型造血幹細胞を移植したマウス(RelA欠損型移植マウス)では、骨髄内の脂肪細胞の著しい増加と共に骨量が減少し、骨髄内の造血環境が悪化する。反対にSpred1/2を欠損したマウスでは、骨髄内の脂肪細胞が消失し、骨量が増加した。このマウスの骨髄細胞と野生型の骨髄細胞とを1:1で混合しドナーとして、造血幹細胞移植を行ったところ、Spred1/2欠損型由来の細胞の分化が野生型のものより上回り、Spred1/2欠損型造血幹細胞の方が造血能が高いことが明らかになった。このように、骨髄内の脂肪細胞が増加すると骨髄内の造血環境が悪化し、脂肪細胞が減ると造血環境が良くなることがわかった。骨髄内の脂肪細胞の分化と造血幹細胞の造血能との相関を明らかにするために、Spred1/2欠損型マウスに4週齢から26週齢まで高脂肪飼料を与え続け、骨髄内の脂肪細胞の増減と造血幹細胞の造血能を調べた。野生型マウスでは雌で特に高脂肪飼料によって骨髄内の脂肪細胞が増加する一方、Spred1/2欠損型マウスでは高脂肪飼料を与えても通常飼料のマウスと同様に骨髄内に脂肪細胞はほとんど増加しなかった。これらのマウスの骨髄細胞を野生型の正常の骨髄細胞とを1:1で混合し、ドナーとして造血幹細胞移植を行った。高脂肪飼料を与えた野生型マウスの造血幹細胞は正常飼料を与えたマウスのものと比べ著しく造血能が低下していたが、Spred1/2欠損型マウスの造血能は、多少低下するものの、野生型正常マウスの造血能よりも高いままであった。このように、骨髄内の造血幹細胞の造血能と、骨髄の脂肪細胞の分化の程度との間には、不の相関があることを明らかにした。
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