研究課題
骨髄環境における造血分化は造血幹細胞と造血ニッチ間のさまざまな分子間相互作用により制御されていることが知られている。骨髄環境に存在する細胞外マトリックスは重要な分子間相互作用に関与することが最近明らかにされつつある。本研究課題ではコンドロイチン硫酸合成に重要な酵素である CS N-acetylgalactosaminyltransferase-1 を欠損したマウスを作出し(T1KO)コンドロイチン硫酸の造血分化における役割を検討した。T1KOマウスでは骨髄内の造血幹細胞数の増加が認められたが、造血細胞移植後の造血回復遅延が認められた。このメカニズムを明らかにするためT1KOの造血幹細胞とWTの造血幹細胞を競合的にWTマウスに移植するCRU assayを行ったところT1KOの造血幹細胞はWTの造血幹細胞に比し有意にCRUが低下しており、コンドロイチン硫酸は造血幹細胞の幹細胞性の維持に重要だあることが明らかになった。一方T1KOの造血ニッチは連続移植の系において有意に高いWTの造血幹細胞の維持作用を有していた。つまりコンドロイチン硫酸は造血幹細胞と造血間質で異なる造血制御を行っていることが明らかになった。さらにT1KOの造血幹細胞のRNA sequenceを行ったところ、T1KOの造血幹細胞はインターフェロンα/βシグナルの活性化を小胞体シグナルの活性化を示しており、このことが、移植後のCRUの低下に関与していると考えられた。本研究の結果は造血幹細胞と造血間質間のクロストークが造血分化に重要であることを示すとともに、コンドロイチン硫酸量の制御が造血幹細胞移植の成績向上につながる可能性を示した。
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件) 備考 (1件)
Annals of Hematology
巻: 99 ページ: 671~673
10.1007/s00277-020-03936-4
Biology of Blood and Marrow Transplantation
巻: 26 ページ: 307~315
10.1016/j.bbmt.2019.09.036
Blood Advances
巻: 3 ページ: 3626~3634
10.1182/bloodadvances.2019000934
Bone Marrow Transplantation
巻: - ページ: -
10.1038/s41409-019-0752-5
Cancer Medicine
巻: 8 ページ: 5058~5067
10.1002/cam4.2401
Transfusion
巻: 59 ページ: 2519~2522
10.1111/trf.15312
https://www.med.niigata-u.ac.jp/emh/research.html#tag_number04