研究課題/領域番号 |
16K09872
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
織谷 健司 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (70324762)
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研究分担者 |
前田 哲生 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (00403064)
金倉 譲 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (20177489)
一井 倫子 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座助教 (30633010)
戸田 淳 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (90770834)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | STAP / アダプター蛋白 / シグナル伝達 / T細胞受容体 / 免疫応答 / 慢性骨髄性白血病 |
研究実績の概要 |
Signal Transducing adaptor protein-2 (STAP-2)を過剰発現させたJurkat Tリンパ腫細胞株は、野生型細胞株と比較して、T細胞受容体(TCR)刺激後に認められるZAP-70やPLC-gammma1の活性化およびNFAT転写活性やIL-2産生の誘導が著明に亢進していた。そのメカニズムとして、STAP-2がLCKやCD3 ITAMドメインと直接結合することで両者の機能的相互作用を強化することを見出した。さらに、STAP-2によるTCRシグナル増強効果の生体内での意義も解析した。T細胞依存性の自己免疫疾患モデルであるEAE (Experimental autoimmune encephalomyelitis)において、STAP-2トランスジェニックマウスは、野生型マウスと比較して、より早期に発症するとともに激しい臨床症状を示した。 STAP-2は、慢性骨髄性白血病(CML)原因遺伝子変異であるBCR-ABLと結合し、BCR-ABL自己リン酸化およびその下流シグナルを促進する。STAP-2欠損あるいは野生型造血幹細胞にBCR-ABL遺伝子を導入した後に移植実験を行った結果、CML発症までの期間がSTAP-2の有無と関係することを見出した。 以上、免疫応答や腫瘍形成におけるSTAP-2の役割を証明するとともに、その分子的メカニズムを明らかにした。 加えて、マウスGVHDモデル実験系の確立およびSTAP-1/STAP-2ダブルノックアウトマウスの樹立にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
STAP-2の作用メカニズムおよび生体内意義に関する知見を蓄積できた。また、種々の疾患モデル実験を通じて、STAP-2人為的操作による治療対象候補疾患を徐々にではあるが示すこともできた。 STAPファミリーにはSTAP-1とSTAP-2が属する。両者は類似の構造を有しているが、発現する細胞・臓器が異なっている。既に保持しているSTAP-1-, STAP-2-ノックアウトマウスを掛け合わせることで、STAP-1/2ダブルノックアウトマウスの作製にも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
STAP-1/2ダブルノックアウトマウスを用いることで、STAPファミリー全体での生体内意義を明らかにしていく。その結果から、STAP阻害剤・作動薬開発に繋げていきたい。 STAP-2は、免疫応答・炎症反応・腫瘍化過程において重要な役割を持っている。立体構造の決定をはじめとしてSTAP阻害剤・作動薬の開発を目指して研究を進めていく。また、企業との提携も模索する。
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