研究課題
STAPアダプター蛋白が炎症反応・免疫反応や腫瘍化に関与する可能性について研究を進めてきた。本研究では、慢性骨髄性白血病(CML)発症および造血幹細胞移植後の移植片宿主病(GVHD)重症度にSTAP蛋白がどのように関与するかについて解析した。(1)CMLマウスモデル実験:STAP-1欠損/野生型造血幹細胞にBCR-ABL遺伝子を発現させたのちに放射線照射したC57BL6マウスに移植した。STAP-1欠損CML幹細胞を移植したレシピエントマウスは野生型CML幹細胞を移植したマウスより長い生存期間を示した。また、STAP-1欠損CML幹細胞は、BCL-2やBCL-XL遺伝子発現が低下し、アポトーシスが高率に誘導されることが判明した。(2)GVHDマウスモデル実験:移植細胞としてC57BL/6マウス由来血球細胞、レシピエントとしてBALB/Cマウスを用いる同種骨髄移植実験系を用いた。STAP-1あるいはSTAP-2を高発現させたドナーリンパ球を移植すると、造血幹細胞移植後GVHDが増強し、それによりレシピエントマウスが高率に死亡することが明らかとなった。特に、STAP-2トランスジェニックリンパ球移植群では、移植後30日頃より皮膚炎、体重減少、腸炎症状を呈し、移植後60日には半数が死亡した。移植後60日に行った腸管のHE染色では、リンパ球浸潤を伴う激しいGVHD像を認めた。一方、ドナーリンパ球のSTAP発現を欠損させた場合、造血幹細胞移植後のGVHD発症は限定的であり、レシピエントマウスの生存率も高かった。これら研究を通じて、STAP蛋白の人為的操作により、(1)CML発症や進展を抑制作用(2)造血幹細胞移植後のGVHD発症予防や病態改善の可能性を示唆するin vivoでの結果を得た。
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