研究課題/領域番号 |
16K09874
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
江副 幸子 大阪大学, 医学系研究科, 特任教授(常勤) (90379173)
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研究分担者 |
金倉 譲 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (20177489)
織谷 健司 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (70324762) [辞退]
水木 満佐央 大阪大学, 医学部附属病院, 准教授 (80283761)
藤田 二郎 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (90608720)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Th17 / Treg / サイトカイン / GVHDモデルマウス / 腸炎モデルマウス |
研究実績の概要 |
本研究では、マウスの生体内で鉄過剰のモデルを作成し、それによりそれにより免疫担当細胞の及ぼす影響を解析するとともに、その分子的機構について解析する。 2016年度は、マウス由来のナイーブT細胞から培養上清に過剰な鉄を負荷することにより、Tregへの分化が低下し、Th17への分化が増強する傾向にあることを示したが、2017年度はそのメカニズムとして、サイトカインの産生に関する影響を調べた。その結果Tregへの分化過程においてIL1bの産生が亢進していた。一方、Th17への分化過程においては、サイトカインの産生に鉄負荷による変化は明らかでは無かった。しかし、Th17への分化の過程において他のT細胞に分化した細胞、結果的にTh17との供培養となるT細胞においては、PCRの結果によりIL-6やIL21の産生が鉄負荷により増強していることが示された。また、マクロファージ単独での培養において鉄負荷によりIL-6及びIL21の産生が増強していた。すなわち、鉄負荷によるTh17への分化誘導は、パラクラインのサイトカイン産生によるものと思われた。一方、鉄負荷による免疫状態のin vivoでの影響を検討するため、腸炎モデルマウスとGVHDモデルマウスを作詞した。腸炎モデルとしてDDS(dextran sodium sulfate)をマウスに経口投与することで血便や体重減少を認めた。それらのマウスにおいて腸管粘膜へのTh17細胞の浸潤を認めた。一方、B10D2マウスの骨髄細胞および脾細胞を致死量照射したBalb/cマウスに移植すると同様に腸炎を生じ、体重減少を認める。これらは移植片によるGVHDのモデルと考えられる。これらの疾患マウスを確立し、疾患の状況をモニタリングできることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、マウスの生体内で鉄過剰のモデルを作成し、それによりそれにより免疫担当細胞の及ぼす影響を解析するとともに、その分子的機構について解析する。 2016年度は、マウス由来のナイーブT細胞から培養上清に過剰な鉄を負荷することにより、Tregへの分化が低下し、Th17への分化が増強する傾向にあることを示したが、2017年度はそのメカニズムとして、サイトカインの産生に関する影響を調べた。その結果Tregへの分化過程においてIL1bの産生が亢進していた。一方、Th17への分化過程においては、サイトカインの産生に鉄負荷による変化は明らかでは無かった。しかし、Th17への分化の過程において他のT細胞に分化した細胞、結果的にTh17との供培養となるT細胞においては、PCRの結果によりIL-6やIL21の産生が鉄負荷により増強していることが示された。また、マクロファージ単独での培養において鉄負荷によりIL-6及びIL21の産生が増強していた。すなわち、鉄負荷によるTh17への分化誘導は、パラクラインのサイトカイン産生によるものと思われた。一方、鉄負荷による免疫状態のin vivoでの影響を検討するため、腸炎モデルマウスとGVHDモデルマウスを作詞した。腸炎モデルとしてDDS(dextran sodium sulfate)をマウスに経口投与することで血便や体重減少を認めた。それらのマウスにおいて腸管粘膜へのTh17細胞の浸潤を認めた。一方、B10D2マウスの骨髄細胞および脾細胞を致死量照射したBalb/cマウスに移植すると同様に腸炎を生じ、体重減少を認める。これらは移植片によるGVHDのモデルと考えられる。これらの疾患マウスを確立し、疾患の状況をモニタリングできることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度確立したDDS負荷による腸炎モデルマウスにおいては、腸管粘膜のTh17細胞やその他T細胞の浸潤が報告され、自己免疫疾性腸炎のモデルといわれている。一方、GVHDモデルマウスでは、皮膚や腸管への免疫細胞の浸潤がある。今後、これらのモデルマウスに鉄を負荷することで病態の悪化がみとめられるか?鉄キレート剤を投与することで改善するか?すなわち鉄負荷が自己免疫疾患の病態やT細胞の分画にin vivoでどのような影響を及ぼすかについて解析する。これらのモデルマウスの鉄負荷において炎症性細胞およびT細胞の分画を検索し、またELIZAを用いて経時的に血清中のサイトカイン濃度を測定し、病態形成への関与を検討する。 一方、骨髄移植症例において移植前の抗がん剤治療により頻回の輸血を行い、血清フェリチンn上昇を認めている症例も経験している。それらの患者の末梢血を採取し、末梢血におけるT細胞の分画や鉄キレート剤の影響患者血清のサイトカインの濃度を解析することで、鉄過剰負荷による免疫機能への影響を検討する。
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