(1) DMSスコアの構築: nCounter system(NCS)やRNAシーケンスにより抽出された予後規定遺伝子の中で最も予後を規定するICOS、CD11c、FGFR1の3因子により、DMS (DLBCL Microenvironment Signature)スコアを構築した。DMSスコアが高い症例は有意に予後良好であり、DMSスコアが低い(微小環境細胞に乏しい)症例は予後不良であった。 (2) 高感度シングルセルRNA増幅システムC1により、予後良好患者群で抽出された分子の多くが、follicular helper/regulatory T cell(Tfh/Tfr)やCD68陽性マクロファージ、FGFR1陽性間質細胞で発現されていることが明らかとなった。これらの微小環境の破綻が予後不良な臨床経過に深く関与している可能性が明らかになった。 (3) DLBCLの遺伝子変異解析: 107症例のFFPE検体からDNAを抽出、ゲノム変異解析を行った。DMSスコアが低い患者群では、B細胞受容体経路活性化を及ぼすCD79B・CARD11・MYD88分子などの予後不良な遺伝子変異を高い頻度で伴っていた。また、P53変異も単独で強力な予後不良因子であったが、これらの症例ではT細胞関連の遺伝子発現が低下、T細胞が機能不全に陥っていることが明らかになった。以上から、DLBCLの特定のゲノム変異が微小環境に及ぼす変化が明らかになった。 (4) DLBCL周囲環境の中でもTfhに関連するICOSについて、DLBCLの予後をいかに規定するのか、マウスモデルを用いて検証を行なった。DLBCLのモデルマウスBCL6トランスジェニックマウス(BCL6Tg)とICOSノックアウトマウスと交配し新規のDLBCLモデルマウス(BCL6Tg/ICOS-/-)を作成、DLBCLの早期発症を認めた。
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