研究課題/領域番号 |
16K09880
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
佐竹 敦志 関西医科大学, 医学部, 講師 (50412028)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | GVHD / Treg / 樹状細胞 / GM-CSF |
研究実績の概要 |
同種造血幹細胞移植後にTregが減少することは、慢性移植片対宿主病(GVHD)発症と関わっていることが示唆されている。これまで、生体内でTregの増幅によりGVHD抑制効果を得るには、IL-2とカルシニューリン活性化が不可欠であることをこれまでに明らかにしている。そこで、T細胞におけるカルシニューリン活性化にはT細胞受容体を介した刺激が必要であるため、TregによるGVHD制御にはIL-2の他に抗原提示細胞が重要な役割を果たしていると考えられる。特に、抗原提示細胞のうち顆粒球単球コロニー刺激因子(GM-CSF)で誘導される樹状細胞(DC)分画はTregを効率的に増幅させるため、GM-CSFはGVHD抑制的に働くことが期待されるが、慢性GVHDに対する効果については検討されていない。この点を明らかにするため、平成28年度は皮膚慢性GVHDマウスモデルを用いて、GM-CSFのGVHD予防効果を検証した。致死的放射線照射を行ったBalb/CマウスにB10.D2マウスから骨髄移植を行い、移植後17日目からGM-CSF投与を行った。GM-CSF投与は短期間投与で効果を得るため、GM-CSFモノクローナル抗体との免疫複合体として行った。その結果、GM-CSFの投与を行った場合、慢性GVHDが有意に抑制されることが分かった。同種移植後マウスのDC分画は移植により、CD8α+DC比率が増加していたが、GM-CSF投与によりその増加は抑えられることが分かった。また、末梢血中や末梢リンパ節でのTreg比率は、GM-CSF投与群でTreg比率が増加していることがわかった。この慢性GVHDモデル発症に関わる炎症性サイトカインIFN-γ、IL-17産生T細胞について検証を行ったところ、GM-CSF投与群ではIL-17+T細胞に加え、IFN-γ+IL-17+T細胞が低下していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
慢性GVHDモデルにおいて、GM-CSF投与により慢性GVHD抑制効果が得られることが確認出来た。また実際、GM-CSF投与が同種造血幹細胞移植後のDC分画へ影響を及ぼし、Tregの増殖を誘導していることが分かり、このことはTreg増殖を介したGVHD抑制の新たなアプローチに成り得ると考える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きマウス慢性GVHDモデルを用いて、GM-CSFによるGVHD抑制効果のメカニズムについて、Treg機能の分析を含めた解析を行う。また、GM-CSFは予防投与だけでなく、治療効果についての検証も進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスモデルにおけるGM-CSFの効果を確認したが、比較的安価なマウスで実験を行うことが出来た。また、抗体やサイトカイン等の試薬も比較的安価に購入することができたため、予定より少ない費用で実験を進める事が出来た。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度はより高額な試薬や、抗体などを使用した実験を予定している。そのため、平成28年度に予定していた費用も使用しながら、研究を進めて行く予定である。
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