同種造血幹細胞移植後の制御性T細胞(Treg)の減少は、慢性移植片対宿主病(GVHD)発症と深く関わっていることが示唆されている。Tregの維持・増幅に重要な役割を果たす樹状細胞(DC)に対して、GM-CSF投与によりDC細胞数増加や特定のサブセットの増幅を誘導し、Treg増殖を介した慢性GVHD制御が可能であるかどうかマウスモデルを用いて検討した。 GM-CSFは野生型マウスに投与した場合と同様に、同種造血幹細胞移植後に投与した場合であっても、CD8α-DC比率の増加を誘導することがわかった。加えて、GM-CSF投与によりTregの増殖が誘導されると共に、主としてIL-17産生T細胞を脾臓や皮膚で減少させ、慢性GVHD抑制効果が発揮されることが明らかとなった。更に、この効果はTregに依存して発揮され、Tregの免疫抑制作用の増強ではなく、Treg比率の増加に依存したものであることを解明した。これらの効果は慢性GVHD発症前に予防的にGM-CSFを投与した場合だけでなく、発症後早期に治療として投与を行った場合でも、GVHDの増悪抑制効果が得られることが分かり、このことからGM-CSFが慢性GVHD治療薬としても利用できる可能性を示すことが出来た。今後はTregの増幅が真にCD8α-DCの増加に依存しているものであるかを検証するとともに、Tregが増加したメカニズムについて更に解析を進めていく予定である。
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