研究課題
造血幹細胞移植では、主要組織適合性抗原であるHLA適合例においても個々人のゲノムに存在する遺伝子多型の一部が抗原として認識され移植免疫反応が誘導される。これらの抗原はマイナー組織適合性抗原(マイナー組織抗原)と総称され、移植片対宿主病(GVHD)や生着不全に関与するとともに、移植片対白血病(GVL)効果の標的分子として重要である。本研究は、HLA適合血縁者間の造血幹細胞移植において、次世代シーケンサー(Hiseq1500)によりマイナー組織抗原の候補遺伝子を網羅的に探索し、その結果を臨床へ還元することを目的としており、本年度は網羅的遺伝子解析の同意を得ることができたHLA適合血縁者間同種骨髄移植のドナー・レシピエントペアにおいて実際の遺伝子解析を行い非同義的SNPを抽出するとともに、HLA結合性解析(netMHCpan)により互いにGVHDあるいはGVL方向へはたらくと推定されるHLA class I結合性マイナー組織抗原の候補遺伝子を同定することが可能であった。今後は、HLA適合血縁者間移植のドナー・レシピエントペアの対象症例数を増やすとともに、GVLが予測されるマイナー組織抗原候補における機能的解析を行なっていく。さらにヒト白血病を再構成した免疫不全マウスを用いてその抗白血病効果の機能解析を行い、マイナー組織抗原を標的としたワクチンや養子免疫療法による個別化免疫療法への応用へと研究を進めていく。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、HLA適合血縁者間同種骨髄移植症例において網羅的遺伝子解析の同意を得ることできるドナー・レシピエントペア症例を探索することから研究活動を開始した。幸い複数の症例ペアでゲノム解析の承諾を得ることができ、これら症例ペアの末梢血から核酸を抽出しHiseq1500によるwhole exome解析を行った。結果は、予想通り遺伝子解析から非同義的SNPを抽出することができ、HLA結合性解析(netMHCpan)データを基として互いにGVHDあるいはGVL方向へのHLA class I結合性マイナー組織抗原の候補遺伝子を同定することが可能であった。これらの基盤データによって、GVL効果が予測されるマイナー組織抗原候補を機能解析へと進めていく方針であり、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
本研究は、主要組織適合性抗原であるHLA適合例において個々人のゲノムに存在する遺伝子多型の一部が抗原として認識され移植免疫反応が誘導されるマイナー組織適合性抗原に焦点をあて、マイナー組織抗原を標的としたワクチンや養子免疫療法による個別化免疫療法への応用を期待するものであるが、そのためのHLA適合血縁者間同種骨髄移植の解析は順調に進んでおり、ドナー・レシピエントペア症例をさらに増やすとともに、マイナー組織抗原候補の機能的解析を進め、ヒト白血病を再構成した免疫不全マウスを用いた抗白血病効果の機能解析へと進めていく方針である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
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