研究課題/領域番号 |
16K09883
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
長藤 宏司 久留米大学, 医学部, 教授 (60343323)
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研究分担者 |
水野 晋一 九州大学, 先端医療イノベーションセンター, 特任准教授 (40569430)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 造血幹細胞移植 / マイナー組織適合性抗原 |
研究実績の概要 |
免疫チェックポイント阻害薬による腫瘍免疫の増強は多くの癌種において臨床効果を示しているが、その腫瘍免疫の主要なターゲットは遺伝子変異に由来するネオアンチゲンであることが明らかになってきている。本研究では、造血幹細胞移植において相互にネオアンチゲンとして認識され得る遺伝子多型の解析と臨床応用を目指している。造血幹細胞移植では、主要組織適合性抗原であるHLA適合例においても個々人のゲノムに存在する遺伝子多型の一部が抗原として認識され移植免疫反応が誘導される。これらの抗原はマイナー組織適合性抗原(マイナー組織抗原)と総称され、移植片対宿主病(GVHD)や生着不全に関与するとともに、移植片対白血病(GVL)効果の標的分子として重要である。 本年度は、次世代シーケンサーによるマイナー組織抗原の候補遺伝子多型の網羅的探索を継続し、ドナー・レシピエントペアにおいて非同義的SNPを抽出し、当該HLAへの結合性予測(netMHCpan)により、HLA class I結合性マイナー組織抗原の候補遺伝子を集積した。さらに、HLA合致近交系マウス(Balb/c,DBA2:H-2d)において脾および骨髄細胞の免疫により、抗白血病効果のターゲット同定を開始している。 今後は、HLA適合血縁者間移植症例においてドナー・レシピエントペアの解析症例数を増やすとともに、集積された候補遺伝子多型をその遺伝子発現から絞り込み、実際の免疫応答の機能解析を行うとともに、マウスモデル系におけるマイナー組織抗原をターゲットとした白血病制御の研究を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、まずHLA適合血縁者間移植症例におけるドナー・レシピエントペアにおいて次世代シーケンサーによるマイナー組織抗原の候補遺伝子多型の網羅的探索を継続した。Whole exome解析にはHiseq1500を使用しドナー・レシピエントペア間の比較により非同義的SNPを抽出し、HLAへの結合性予測にnetMHCpan3.0を用いHLA class I結合性マイナー組織抗原の候補遺伝子多型を集積した。さらにこれらの遺伝子多型から、血液系細胞での遺伝子発現を指標することで標的となり得る遺伝子多型を絞り込むパイプラインを作成した。同時に、マイナー組織抗原をターゲットとするマウスモデルを確立するためHLA合致近交系マウスを導入している。Balb/cおよびDBA2はH-2d系であり、約9000箇所の非同義的SNPがある。これらの遺伝子多型から抗白血病効果を担い得るマイナー組織抗原を同定するため、Balb/cマウスをDBA2の脾および骨髄細胞で免疫し、DBA2由来の白血病細胞への効果を検証している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、造血幹細胞移植におけるマイナー組織抗原の解析により、GVHDやGVL効果予測による適切なドナー選択への可能性と同時に、マイナー組織抗原を標的としたワクチンや養子免疫療法による個別化免疫療法への応用を期待するものである。今後はHLA適合血縁者間移植症例でのドナー・レシピエントペアにおけるマイナー組織抗原の候補遺伝子多型をさらに集積すると同時に、各々の遺伝子多型とその遺伝子発現予測から抗白血病効果の免疫誘導に適する非同義的SNPを抽出し、免疫学的効果の解析を進めていく。さらに、免疫ターゲットとしての非同義的SNPの効果を検討するために、HLA合致近交系マウスによるマウスモデル(DBA2細胞で免疫誘導したBalb/c)を構築しており、遺伝子導入により作成したDBA2由来の白血病細胞に対するBalb/cマウスの抗白血病効果を検証し、ターゲットとなるマイナー組織抗原の同定を進める方針である。
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