研究課題
本研究では、すでに先行する研究の結果として、産科的抗リン脂質抗体症候群や原因不明の不育症患者といった自己免疫的機序が背景にあると想定される流産患者において、有意に補体C1qに対する自己抗体(抗C1q抗体)が出現していることを横断的検討で解析している。今回、本研究においては、流産における抗C1q抗体の関与を動物モデルで示すために、8-12週齢の妊娠BALB/cマウスにマウスモノクローナル抗C1q抗体(JL-1:500μg/kg)、マウスコントロールIgG(500μg/kg)、またはPBSを妊娠8日目および12日目に経尾静脈的に投与し、妊娠16日目における胎仔吸収率、胎仔重量、胎盤重量、血清C3a値、胎盤における補体沈着について各群間で比較した。また同様の検討を、抗補体活性化抗体(抗C5a受容体抗体)を前投与して行った。その結果、 JL-1投与群では各コントロール群と比較して、胎仔吸収率が有意に高く (p < 0.01)、胎仔および胎盤重量が有意に低値で (p < 0.05)、血清C3aは有意に高値を認めた(p < 0.01)。血清C3a値と流産率は逆相関の関係を示した。また、JL-1投与群において、胎盤組織において広範な補体沈着を認めた。さらに、抗マウスC1q抗体投与群におけるこれらの変化は、抗C5a受容体抗体の前投与によりコントロール群と同程度に変化した。これらのことから、 抗C1q抗体は習慣性流産における新たな病原性自己抗体である可能性が示唆され、その存在は補体系の活性化を介して胎盤不全を惹起しうると考察している。
1: 当初の計画以上に進展している
予定していたより研究の進展が明らかである。当初の仮説通りに抗C1q抗体を用いた流産モデルを作成することができた。今後は論文投稿を進めていき、また解析した結果について、周辺領域も含めて病態理解を進める予定である
すでに予定していた抗C1q抗体を用いた習慣流産(不育症)モデルマウスの作成を行い、抗C1q抗体が補体活性化を介して胎盤不全を惹起し、流産や胎仔発育不全を来す可能性があることを示した。今後は、より詳細な抗C1q抗体の存在により活性化される補体活性化機構や補体活性化の母胎への影響について解明を進める
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