研究課題
樹状細胞(Dendritic Cell:DC)における細胞質型チロシン脱リン酸化酵素Shp-1の機能解析を目標にCre-loxP システムを用いてDC特異的にShp-1が欠損するコンディショナルノックアウトマウス(Shp-1 CKO)を作製した。Shp-1 CKOではDCの活性化に加えてT細胞からのIFNγの産生亢進があり、腎臓では加齢に伴い免疫複合体が沈着して糸球体腎炎が発症する。また、Shp-1 CKOの腎組織を免疫組織染色により詳細に検討したところ、T細胞とマクロファージの強い浸潤が認められ、 Shp-1 CKOでは尿細管間質性腎炎が発症することが確認された。ヒトにおいては、外分泌腺が主に障害される自己免疫疾患であるシェーグレン症候群(SjS)において、免疫複合体が腎臓へ沈着し、尿細管間質性腎炎が発症することが知られている。従って本研究課題では、Shp-1 CKOにおける外分泌腺障害の有無に関して検討を行った。その結果、Shp-1 CKOは高齢になると唾液腺が萎縮し、ピロカルピンの刺激にて誘発される唾液の分泌量が40週齢を超える個体において、有意に低下することが判明した。また、組織学的には、Shp-1 CKOでは唾液腺の萎縮と唾液腺内の濾胞の強い形成が認められた。また、唾液腺内へ浸潤する炎症細胞をフローサイトメーターにて解析したところ、唾液分泌が低下する個体において、T細胞とB細胞が増加する事実が得られた。これらの結果から、Shp-1 CKOは加齢とともに、ヒトのSjSに類似する自己免疫性唾液腺炎を発症することが明らかになった。
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