研究課題/領域番号 |
16K09889
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
溝口 史高 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (60510360)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 線維芽細胞 / 関節リウマチ |
研究実績の概要 |
これまで申請者は、線維芽細胞が機能的に異なる複数のサブセットから構成され、関節リウマチでは線維芽細胞サブセットの割合が変化をすることにより関節炎の病態が形成されていることを明らかにしてきている。このような線維芽細胞サブセットの調節機構を明らかにすることができれば、新たな作用機序の治療法の開発へと繋がることが期待される。 2016年度は、申請者が同定した線維芽細胞サブセットの中で、関節リウマチの病態に関与する様々な炎症性サイトカインを高産生するサブセットに着目し、このサブセットの細胞機能を調節する遺伝子を同定することを目的に検討を行った。まず、関節リウマチ患者の滑膜組織に存在する各種滑膜線維芽細胞サブセットの網羅的遺伝子発現データを用い、炎症性サイトカインを高産生するサブセットに高発現する転写因子を同定した。これらの転写因子の中には、他の細胞種で炎症性サイトカインの産生を制御することが報告されている遺伝子に加え、これまで炎症性サイトカインの発現制御や線維芽細胞機能制御への関与が知られていない遺伝子も複数含まれていた。次に、関節リウマチ患者の滑膜組織より樹立した滑膜線維芽細胞株を用い、それぞれの転写因子の発現をsiRNAにて低下させた後に、関節リウマチの病態において線維芽細胞の主要な活性化因子であるTNFαの存在下もしくは非存在下で培養し、滑膜線維芽細胞機能への影響を解析した。その結果、TNFα刺激によるサイトカインやプロテアーゼの産生を制御する転写因子を複数同定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2016年度は、線維芽細胞サブセットの網羅的遺伝子発現データをもとに、関節リウマチの病態に関与する様々なサイトカインを高発現する線維芽細胞サブセットの機能制御を担う転写因子を同定することができた。この結果は、線維芽細胞のサブセットに着目することにより、新たな治療標的候補分子の同定を目指す本プロジェクトの第一歩として重要な進捗である。一方、初年度に行う予定としていた、同定した転写因子の線維芽細胞における詳細な機能解析やシグナル伝達経路の解明は2017年度に行うこととなり、やや遅れていると評価をした。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討から、同定した転写因子は線維芽細胞からのサイトカイン産生を制御するのみならず、本来であれば組織の恒常性維持を担う線維芽細胞を病的なサブセットへと転化させる転写因子である可能性が示唆されている。そこで2017年度は、(1)同定した転写因子によるサイトカイン産生を制御するシグナル伝達経路の解明、(2)病的線維芽細胞サブセットから非病的サブセットへの転換制御の可能性の検討、の二つの方向性でプロジェクトを進める。(1)の研究により、病的な線維芽細胞サブセットの機能を制御することによる治療戦略の開発へとつながることが期待される。また(2)の研究により、病的な線維芽細胞サブセットの形成を抑制することや、病的な線維芽細胞サブセットの形質を非病的な形質へと転換させることが可能となれば、線維芽細胞を標的とした治療戦略実現への大きなブレイクスルーとなることが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画ではRNA-seqを用いた網羅的遺伝子発現解析を行う予定としていたが、線維芽細胞サブセットの機能調節を行う転写因子の同定に時間を要することとなり着手することができず、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の計画では初年度の後半より開始する予定であった、同定した転写因子の線維芽細胞サブセットの機能調節機構の解明のために使用する。
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