研究実績の概要 |
本研究では、TCRシグナル伝達系ZAP70 分子に点突然変異を有し、BALB/c背景で関節炎を発症するSKGマウスの遺伝的背景をC57BL/6(B6)背景にかえたC57BL/6 ZAP70 skg/skgマウス(B6SKG)マウスがループス様の腎炎を発症する分子メカニズムの解明を試みた。B6SKGマウスでは、抗DNA抗体の産生や腎糸球体におけるC3やIgGの沈着がみられ、ループス様腎炎が発症していることが認められた。B6SKGマウスでは、wild typeのB6マウスやBALB/cマウス、SKGマウスなどと比較して、脾臓にGerminal Centerが自然と発達しており、Germinal Center B細胞(AA4.1-,GL7+)やB細胞からの自己抗体の産生をヘルプするfollicular helper T 細胞(Tfh)(CXCR5+, Bcl6+, ICOS+, PD1high)が有意に増大していた。またTh17やTh1、Tregもwild typeに比べ増大しており、Tregの機能分子であるCD25の発現が低下していた。BALB/c背景でなくB6背景のSKGマウスで特にTfhが増大する分子メカニズムを解明するため、Tfhの分化にかかわるサイトカイン(IL-6, IL-21)や補助刺激分子(CD80/86, ICOSL, OX40Lなど)の発現を、wild typeのBALB/cマウスとB6マウスで比較した結果、B6マウスではBALB/cマウスに比較して、樹状細胞(DC)上の補助刺激分子CD80/86とICOSLの発現が有意に亢進していることを見出した。さらに、これらの補助刺激分子をブロックすることで、Tfhの分化やループス様腎炎の発症が有意に抑制された。以上より、B6背景においては、DC上の補助刺激分子の発現が亢進していることが一因となり、Tfhの分化が誘導されやすい環境にあり、その結果、ループス腎炎などの自己抗体に依存する全身性自己免疫疾患が発症しやすいとの知見をまとめ、論文投稿した(Matsuo, Hashimoto et al. J. Immunol 2019 In press)。
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