研究実績の概要 |
全身性エリテマトーデス(SLE)において、スフィンゴシン1リン酸受容体1(S1PR1)の発現低下や、SLEの代表的モデルマウスの一つであるMRL/lprマウスにS1PR1アゴニストを投与することでリンパ球のアポトーシスが増加し腎障害が軽減したとの報告(J Immunol:194(11),5437-5445, 2015)がある。我々は、MRL/lprマウス脾臓由来T細胞におけるmicroRNA223-3p(miR223)の発現亢進を確認し、ルシフェラーゼ遺伝子をライゲーションしたS1PR1の3’UTR領域含有レトロウイルスを遺伝子導入したEL-4細胞株を用いて、S1PR1の3’UTRへのmiR223の結合が S1PR1の発現抑制に関与することを確認した。 SLEで発現亢進を確認したmiR223が、標的であるS1PR1の発現抑制を介してリンパ球のアポトーシス機能等に影響することで、SLEの病態に関与している可能性を考え、miR223 mimic導入T細胞を用いたin vitroの系でのリンパ球の機能解析に加え、miR223欠損SLEモデルマウスの作成に着手した。miR223欠損B6MRLマウスについては、正常B6MRLマウスと比較し、末梢リンパ節CD4+T細胞中のearly apoptosis細胞の増加を認めた。 miR223欠損によるSLEの表現型の差異を確認する上で、上記マウスに加え、より早期に重篤なSLE様臓器病変を発現するMRL/lprについても同様にmiR223欠損マウスを作成した。交配が完了したmiR223欠損MRL/lprマウス及びB6MRLマウスを用い、現在表現型解析 (尿蛋白, 腎病理, dsDNA抗体等) を実施中であり、miR223を介したS1PR1の発現の差異がin vivoにてSLEの病態に与える影響について詳細に検証する予定である。
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