研究課題
(1)昨年度に確立したマウスILCサブセットの分離法を用い、各部位におけるILCサブセットの検討を継続した。昨年度は、関節炎誘導により、ILCの総数が増加すること、その中でもCCR6+ILC3の割合が増加すること、炎症局所に近づくにつれてCCR6+ILC3が集簇していることを見出した。このCCR6+ILC3は、関節炎惹起によりIL-17, IL-22の発現を増強していた。一方、ILC1のIFNg発現やILC2のIL-5, IL-13発現に変化はなく、関節炎惹起によるサイトカイン産生能の亢進は、CCR6+ILC3に特異的であることがわかった。(2)CCR6+ILC3によるIL-17産生が病態形成に関与できるかどうかを検討するために、関節リウマチ発症過程での主たるIL-17産生源と考えられているTh17細胞との比較を行った。関節炎モデルマウスにおいて、単位細胞あたり、CCR6+ILC3はTh17細胞の約4倍のIL-17産生能を有していた。生体内でのCD45陽性細胞中に占める割合を考慮にいれても(Th17細胞 約0.20% vs CCR6+ILC3 約0.12%)、CCR6+ILC3にはTh17細胞と同等のIL-17産生能があると考えられた。(3)関節炎誘導により量的にも質的にも活性化しているCCR6+ILC3に関節炎惹起能があるかどうかを直接検討することを目的に、CCR6+ILC3の養子移入実験を行った。関節炎惹起過程において、正常マウスから分離したCCR6+ILC3を経静脈的に移入したが、関節炎の悪化は認めなかった。
2: おおむね順調に進展している
・ 新たに確立したマウスILCサブセットの分離方法を用い、関節炎モデル発症過程において、量的にも質的にも活性化しているILCサブセットの同定に成功した。・ この同定したCCR6+ILC3分画は、関節リウマチの病態形成において重要な役割を果たすとTh17細胞と同等のサイトカイン産生能を有していることから、関節炎発症過程において何らかの作用を有している可能性が示唆された。・ この細胞集団の病原性を明らかにする目的で行ったCCR6+ILC3の養子移入実験で、CCR6+ILC3の関節炎惹起作用を直接証明することは出来なかった。
今後はマウスで認められたCCR6+ILC3の量的・質的な活性化が、ヒト関節リウマチ患者でも再現できるかどうかを検討する。このために、マウスと同様に、ヒトでのILCサブセットを同時に同定する方法を確立し、各ILCサブセットが正確に分離できているかを検討する。その確立した方法を用いて、ヒト末梢血や滑液中のILCサブセットを解析する。何らかの違いが認められた場合、その違いと臨床パラメーターとの相関を評価し、その違いの臨床的意義を検討する。これらを通じて、新たに同定したCCR6+ILC3分画が、関節リウマチ治療における新規治療標的やサロゲートマーカーとなり得るかどうかを検討する。
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