研究課題/領域番号 |
16K09898
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
赤星 光輝 九州大学, 大学病院, その他 (40391841)
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研究分担者 |
有信 洋二郎 九州大学, 大学病院, 講師 (90467928)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マスト細胞 / 強皮症 / 生理活性ペプチド |
研究実績の概要 |
強皮症ヒトサンプルを用いた解析を昨年度に引きつづき継続した。九州大学病院 免疫・膠原病・感染症内科に入院・通院中で同意の得られた全身性強皮症患者より末梢血を採取し、エンドセリン1(ET-1)およびアンギオテンシンII(AT II)の生理活性ペプチド濃度、また血中ヒスタミン濃度をELISA法で測定した。また主に当院皮膚科にて強皮症診断目的で施行された皮膚生検サンプルを用いて、トルイジンブルー染色、トリプターゼ/キマーゼ(chymase)染色、c-kit免疫染色等を行い、標本面積当たりの皮膚マスト細胞数(/mm2)を評価した。またマッソン・トリクローム染色による線維化の定量的な評価を行っている。 並行して、強皮症モデルマウスを用いた解析を行った。ブレオマイシン(BLM)誘導性強皮症モデル(BLM皮下投与の系)を用いて、予備実験としてBLM(1~500ug/回)の週3回(×4週間)投与を行い、マウス全身状態(生存率)や皮膚硬化の程度をもとに至適投与量を判定した。最終的に100ug/回×週3回(4週間)の投与法により投与後、皮膚や肺における炎症・線維化状態をH&E染色やマッソン・トリクローム染色などを行いマウスの臓器・組織での強皮症様変化(皮膚硬化や肺線維症など)を評価した。ヒト強皮症やマウスモデルのサンプルを用いた解析から強皮症病変部におけるマスト細胞の増加および活性化が示唆された。今後、マスト細胞欠損マウスやプロテアーゼ(chymase)欠損マウスを用いて線維化病態や血中生理活性ペプチドの評価を行い、強皮症病態形成におけるchymaseの役割を検証し、chymaseが強皮症治療の標的候補となりうるかを検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全身性強皮症患者の末梢血サンプル収集を進め、血中生理活性ペプチド(ET-1、AT IIなど)やマスト細胞活性化マーカー濃度(ヒスタミンなど)の測定を行い、臨床情報との比較を行った。今後も症例数を増やしての検討が必要であるが、特定の自己抗体と血中生理活性ペプチド濃度との関連や、臓器合併症とマスト細胞活性化マーカーとの関連を示唆するデータも得られており、サンプル数の増加によりさらに強い関連性が得られることが期待される。 また、マウス実験に関してもBLM誘導性強皮症モデルにおける至適条件が確認できた。今後、BLMの至適投与量を用いて強皮症病態におけるマスト細胞の役割を明らかにするため、マスト細胞欠損マウスやマスト細胞由来プロテアーゼ(chymase)欠損マウスを用いて線維化病態の重症度や血中生理活性ペプチドの変化等の解析を進める予定である。 以上、概ね当初の研究計画から逸れることなく実行できているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
全身性強皮症患者の末梢血サンプル数を増やし、ET-1、AT II、VIPといった生理ペプチドの測定を引きつづき行う。また、強皮症患者におけるマスト細胞活性化状態の評価のため、マスト細胞活性化マーカーである末梢血中ヒスタミンやトリプターゼ値のELISA法による測定も行う予定である。その際、皮膚生検を行っている患者においては、その皮膚マスト細胞数や線維化の程度を評価し、生理活性ペプチドやマスト細胞活性化マーカーとの関連性を評価する。 BLM誘導性強皮症モデルマウスを用いた実験においては、BLMの至適投与量を用いて強皮症病態におけるマスト細胞の役割を明らかにするため、①野生型マウスと②Kit遺伝子変異をもつマスト細胞欠損マウスでのBLM反応性、すなわちBLM長期皮下投与による皮膚硬化・線維化変化の比較実験を開始した。今後、両者で差が認められた場合、③マスト細胞ノックインマウス(野生型マウス由来の培養マスト細胞を皮内/静脈内に移入したマスト細胞欠損マウス)を作成し、3群間でのBLM反応性や血中生理活性ペプチド濃度を比較する予定である。さらに④マスト細胞由来プロテアーゼ(chymase)欠損マウスを用いての同様の解析を進める予定である。これらの解析により、全身性強皮症の病態形成における血中生理活性ペプチドを介したマスト細胞およびマスト細胞由来プロテアーゼ(chymase)の役割についての考察が得られるものと考えられる。
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