研究課題
全身性強皮症患者より末梢血を採取し、エンドセリン1(ET-1)およびアンギオテンシンII(AT II)の生理活性ペプチド濃度、また血中ヒスタミン濃度をELISA法で測定した。その結果、強皮症患者末梢血ET-1およびAT II濃度は、間質性肺炎合併例や抗Scl-70抗体陽性患者において健常人と比較し高い傾向が認められた。血清ヒスタミン値については強皮症患者、とくに間質性肺炎や肺高血圧症合併例で上昇しており、血中ヒスタミン値と肺機能(VC, DLCO)や間質性肺炎マーカー(KL-6, SP-D)との相関(r=0.3程度)が認められた。強皮症皮膚組織を用いて、トルイジンブルー染色、トリプターゼ/キマーゼ(chymase)染色、c-kit免疫染色、マッソン・トリクローム(MT)染色による皮膚マスト細胞数や線維化の程度を評価したところ、皮膚病変部でのマスト細胞の発現亢進・活性化およびその線維化病態との関連が認められた。一方で、代表的な強皮症モデルマウスであるブレオマイシン(BLM)誘導性強皮症モデル(BLM皮下投与の系)を用いて、BLM(100ug/ 回)の週3回(×4週間)投与を行い、臓器・組織での強皮症様変化(皮膚硬化や肺線維症など)をH&EやMT染色にて評価したところ、強皮症病変部におけるマスト細胞の増加および活性化が示唆された。また同強皮症モデルにおいて、マスト細胞欠損マウス(C57BL/6-KitW-sh/W-sh)、chymase欠損マウス(B6-Mcpt4-/-)を用いて同様の評価を行った結果、これらマウスにおいては強皮症病態が野生型より軽微であった。以上より強皮症病態形成における種々の生理活性物質の調節を介したマスト細胞およびマスト細胞由来プロテアーゼ(chymase)の関与が示唆された。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Arthritis Res Ther.
巻: 21 ページ: 30.
10.1186/s13075-019-1823-0.