研究課題/領域番号 |
16K09899
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
中村 英樹 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (10437832)
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研究分担者 |
清水 俊匡 長崎大学, 病院(医学系), 医員 (40770467)
川上 純 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (90325639)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 濾胞性樹状細胞 / HTLV-I |
研究実績の概要 |
HTLV-Iキャリアと抗HTLV-I抗体陰性シェーグレン症候群(SS)間では血清学的な差異は無いが、HAMに合併したSS(HAM-SS)では抗Ro/SS-A抗体頻度が有意に少ない。SSの自己抗体産生機序のひとつに異所性二次濾胞の存在が知られ、濾胞内の濾胞性樹状細胞(follicular dendritic cell: FDC)が産生するCXCL13がB細胞のホーミングに重要である。現在扁桃組織10検体以上について、FDC樹立を試みており、このうち数株においては、線維芽細胞様の接着細胞増殖を確認している。これらについて、CD14, CD21,CD23,CD54などの細胞表面マーカーや細胞質内のBAFF発現についてフローサイトメトリー法により確認を行っているところである。また、培養day2のFDC様細胞の免疫染色では、CD14, CD23,BAFFに加えて、CD40、ICAM-1、VCAM-1発現がみられている。FDC細胞株が得られたらHTLV-I感染細胞株との混合培養を行い、FDC細胞株の形態変化およびB細胞のホーミングに必要なCXCL13やBAFF濃度の変化をELISA法にて観察する。これらの検討からFDC数が減少あるいはCXCL13濃度が低下することが証明できれば、HTLV-I感染による自己抗体産生抑制に言及可能となる。 また、唾液腺組織を用いた検討では、HAMを合併したSSでは浸潤単核球にHTLV-I tax遺伝子発現が優位であり、導管上皮細胞には、taxおよびHTLV-I bZIP factor (HBZ)両者の発現があることが示された。また、抗HTLV-I抗体陽性無症候性キャリアに合併したSSでは、浸潤単核球・導管両者とも、HBZ優位の発現があることが示された。自然免疫に関連して、TLR7-9の唾液腺組織浸潤単核球・導管上皮細胞での確認とTLR7下流シグナル(MyD88、TRAF6およびIRF-7)の確認を行い、培養唾液腺上皮細胞と末梢血形質細胞様樹状細胞におけるI型IFN産生についても検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定通りに研究が進まない点としては、扁桃組織が得られる時期に偏りがあることが一点である。また、コラゲナーゼ処理ではFDC細胞株が得られず、原著論文著者に問い合わせを行いトリプシン・EDTA処理を行ってもいるが、未だ樹立できていない。また、口腔内からの摘出のためコンタミが多いのも樹立が遅れている理由のひとつである。現在、FDCを示唆する接着細胞は数検体で確認しており、これらの表面マーカー確認に時間を要している。さらに、検討する表面マーカーについて追加で採用すべき2つのマーカー(抗Fibroblast/FDC抗体)があり、これらも併せて検討する必要性が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
扁桃組織を入手するための連絡を緊密に行う。また、扁桃組織処理を複数の方法で行い、感染症対策も抗真菌剤での洗浄を行うなどより厳密な方法で行う。また培養液についてもOptiMEMのみでなく、問い合わせて提案のあったDMEM培養液使用も考慮する。現在、20株以上の扁桃についてFDC樹立を検討中である。共培養については、FDCへのHTLV-I感染やアポトーシスの有無の確認、FDCからのCXCL13やBAFF産生への影響をみる予定である。表面マーカーでのFDC樹立が確認でき次第、HTLV-I感染細胞株および対照のJurkat細胞との共培養実験に移る。FDC株樹立に関しては、少なくとも3株以上の樹立を目指したい。一方末梢血および扁桃組織由来のB細胞をsCD40L、IL-4、IL-10で刺激した際のIgG産生とHTLV-I感染細胞株との共培養後のIgG産生量変化確認予定である。最終的にSS患者末梢血由来のB細胞を同様に刺激した際の抗Ro/SS-A抗体産生とこれに対するHTLV-I感染細胞株の影響まで確認する方針である。
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