本年度は、最終目的としていた本研究に関する論文投稿を行っており、現在査読者のコメントに従い改訂作業中である。 本論文(すなわち本研究)では抗NR2抗体と抗U1RNP抗体との相加効果を検討した。脳脊髄液(CSF)-抗NR2抗体陽性はCSF-IL-6上昇と相関したが、CSF-抗U1RNP抗体陽性はIL-6と直接的な関係はなかった。しかし両抗体が同時に存在する患者(DP)では抗NR2抗体単独陽性(aNR2)患者より、CSF-IL-6はさらに高濃度になっていた。この結果は、抗U1RNP抗体は抗NR2抗体の併存下においてのみ、IL-6の上昇に関与する可能性を示唆している。一方で、抗NR2抗体と異なりCSF-抗U1RNP抗体陽性はCSF-IL-8濃度と関係し、aNR2よりもDPでより高濃度となっていた。CSF-IL-6がCSF-抗NR2抗体と強く相関することから、IL-8がBBBの透過性を亢進させ抗NR2抗体の血清からCSFへの移行を誘導する可能性を考えた。実際、DPとaNR2とを比較した場合、BBBの透過性や抗NR2抗体価に統計学的な有意差は検出できなかったものの、DPで亢進するあるいは高値となる傾向があり、BBBの透過性とCSF-IL-8の間には明らかな相関関係があった。以上の結果からCSF-抗U1RNP抗体は、抗NR2抗体と異なり直接的に脳障害を起こす可能性は明らかでないが、髄腔内でIL-8の産生を誘導しBBBの透過性を亢進させて抗NR2抗体の直接的な病原性(髄腔内でのIL-6上昇)を強めている可能性がある。 今後、同様の研究を行っている他施設と共同して、本邦におけるNPSLEコホートを整備し、自己抗体をマーカーとしたNPSLEのサブセットを明確にできるよう研究を継続する。
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