研究課題
成人スティル病患者末梢血を用いて各細胞分画のヒストン修飾変化を解析した。その結果、単球分画、好中球分画において健常人に比して、ヒストンメチル化の指標として転写亢進の有用なマーカーと推測されるH3K4met3/H3K27met3が亢進していることを明らかにした。一方、他の膠原病患者において同様な解析を行ったところ、成人スティル病患者末梢血好中球におけるH3K4met3/H3K27met3の亢進は明らかではなかった。さらに、成人スティル病患者のうち、活動性の高い患者と活動性の低い患者で比較したところでは、疾患活動性の亢進した患者における単球分画のみがH3K4met3/H3K27met3の亢進を有意に示した。以上のことから、成人スティル病におけるヒストン修飾変化の明らかで病態への関与の可能性が高い末梢血細胞群として単球分画に焦点を絞って解析を行った。この分画は、細胞数が少なく通常のChip-seqに必要な細胞数を集める事は不可能と考え、まず患者単球における遺伝子発現の変化を明らかとし、発現変化の強い遺伝子に絞ってヒストン修飾変化を詳細に解析することとした。そのため、患者末梢血単球分画を用いて、健常者との比較でtranscriptome解析を行った。その結果、興味深い遺伝子発現変化が明らかになった。発現亢進している上位20遺伝子および発現低下している20遺伝子を抽出し、これらの発現程度を再度quantitative RT-PCRにて解析し、その内特に変化の診られた10遺伝子を対象に現在Chip-assayを行っている。予備実験にては、特異的な変化を示す結果が得られている。
3: やや遅れている
疾患特異性の観点から行ったフローサイトメーターを用いた解析にてヒストン修飾変化の強い末梢血亜分画が、細胞数の極めて少ない単球分画であり、特に成人スティル病患者においては、この分各の細胞数が少なく、プールサンプルの作成が必要となったこと、および疾患活動性の高い患者がこの年度に少なかったことが大きな理由である。
1. 対象患者の当科への受診を促す試みを行う。当科において強い連携関係にある当該医療圏の医療施設に呼びかけて患者の紹介を進める。2. トランスプリプトーム解析の結果を有効利用し、ネットワーク解析などを駆使してより病的可能性の高い遺伝子を推定し、Chip-assayの省エネによりその遺伝子における転写制御領域の解明に努める。3. ATAQ-seqなど新規実験方法を修得して、新たな解析を行う。などが考えられる。まずは、1と2を行い、これらが不十分な場合には3を行うが、これには余分な時間を必要とすることになる。
(理由)初年度、疾患活動性の高い成人スティル病患者の単球を回収したが、細胞量が少なくトランスクリプトーム解析することができなかった。本年度にさらに症例を集め、数症例分の細胞をまとめて回収しトランスクリプトーム解析を行った。しかしながら、年度末の解析となった為、解析費用の請求が次年度になってしまった。(使用計画)トランスクリプトーム解析で明らかになった発現変動遺伝子において、ヒストンメチル化との関連を解析するため、クロマチン免疫沈降を行う予定である。クロマチン免疫沈降に使用する抗体は高価の為、次年度の繰り越しで解析費用に充てる計画である。
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