研究課題/領域番号 |
16K09903
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
荒木 靖人 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (10580839)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 関節リウマチ / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
関節リウマチ(RA)は、いまだ原因が完全には解明されていない根治の難しい関節炎疾患である。RA滑膜線維芽細胞(SFs)におけるクロマチン構造と転写因子(複合体)の相互作用による遺伝子転写異常の機構を解明する事により、RAにおけるエピジェネティクス制御異常の全体像を明らかにできる。その結果、RASFsにおいて遺伝子転写が異常となり活性化を来たす仕組みが判明する。本研究では、クロマチンの立体的構造という新しい視点から、RAにおける遺伝子転写の制御異常の病態を解明する事を目的とし、クロマチン構造の解析と同時にゲノムDNAの転写制御領域に結合する転写因子を明らかにする予定である。 埼玉医科大学倫理委員会の承認下に、RAおよび変形性関節症(OA)患者より人工関節置換術時に滑膜組織を採取し、コラゲナーゼとヒアルロニダーゼにて処理後、4~8回継代培養した細胞をSFsとして実験に用いている。これまでに、RASFsのゲノムDNAにおける転写制御領域をFAIRE-seq法(ホルムアルデヒド固定後に超音波処理にてDNAを断片化し、ヌクレオソームやDNA結合タンパク質と結合していないFAIRE領域をフェノール・クロロホルム抽出により回収し、その塩基配列を次世代シークエンサーにより決定する)により同定した。ヌクレオソームに巻き付いていないゲノムDNAの部分に転写制御領域が存在しており、転写因子などのDNA結合タンパク質の複合体が結合して、遺伝子転写を制御している。その多くは遺伝子転写の活性化と関連するプロモーターやエンハンサーとして機能するcis制御領域である。RASFs特異的なFAIRE領域の塩基配列を解析した結果、転写因子のコンセンサス・モチーフ解析により結合する転写因子群を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していた1年目の実験はほぼ順調に進行し、期待された結果も出始めている。関節リウマチ滑膜線維芽細胞特異的な転写因子を明らかにはしたが、それが実際にゲノムDNAに結合しているかどうかをクロマチン免疫沈降法により確認するまでには至っていないため。
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今後の研究の推進方策 |
1年目では、クロマチンの1次構造レベルの解析として、関節リウマチ滑膜線維芽細胞(RASFs)のゲノムDNAにおける転写制御領域をFAIRE-seq法により同定し、同領域に結合する転写因子群を明らかにした。今後、クロマチンの2次構造レベルの解析として、RASFsにおける局所的なクロマチン構造(ユークロマチン、ヘテロクロマチン)をChIP-seq法とBisulfite sequencing法により解析する。次に、クロマチンの3次構造レベルの解析として、RASFsにおいてゲノムDNAの転写制御領域同士の相互作用によるクロマチン・ループ形成(3次元的なクロマチンの全体構造)をHi-C法により解析する。最後に以上の結果に基づき、RASFs特異的なスーパーエンハンサーを同定する。これらの成果により、RAの病態としてエピジェネティクス制御の異常を明らかにし、将来的に新規治療の開発へとつなげていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた1年目の実験はほぼ順調に進行し、関節リウマチ滑膜線維芽細胞特異的な転写因子を明らかにはしたが、それが実際にゲノムDNAに結合しているかどうかをクロマチン免疫沈降法により確認するまでには至らなかった。そのため、予定していた研究費より支出額が少なくなってしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
1年目に予定していたが遂行できなかった研究(関節リウマチ滑膜線維芽細胞特異的な転写因子が実際にゲノムDNAに結合しているかどうかのクロマチン免疫沈降法による確認)を2年目の早期に完了し、引き続き2年目に予定している研究にとりかかる予定である。
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