研究課題
シェーグレン症候群(SS)は著効を示す治療薬のない国の定める難病である。病態形成機序の詳細は解明されていないが、B細胞の機能亢進が病態に深く関与していることは多く報告されている。我々はこれまでの研究でSS患者末梢血単球におけるBAFF受容体の発現異常と患者血清IgG値が正の相関を有することを示し、患者単球の異常がB細胞の抗体産生能に影響を及ぼしていることを明らかにした。そこでこの機序を阻害する化合物はSS治療薬として開発の可能性があり、平成28年度の研究成果により数種のイオンチャンネル阻害剤にBAFF受容体を介した単球からのIL-6産生を抑制し、B細胞からのIgG産生を抑制することを見出した。加えて患者末梢血単球におけるイオンチャンネルの発現亢進と、BAFF刺激を受けることでさらに発現が促進することを見出した。平成29年度は前年度見出したイオンチャンネル阻害剤のin vitroおよびin vivoでの薬効試験を実施した。具体的には患者末梢血単球とB細胞をBAFF存在下で共培養することにより誘導されるIgG産生に対する効果と自己抗体産生モデルマウス(MRL/lpr)に該当薬剤を投与し、抗dsDNA抗体価の亢進に及ぼす影響を検討した。その結果、当該薬剤は患者B細胞からの単球とBAFFにより誘導されるIgG産生を強く抑制することが示された。さらに自己抗体産生モデルマウスにおいても抗dsDNA抗体価亢進を投与後14週以降で抑制する傾向にあることが明らかになった。このことによりイオンチャンネル阻害剤である当該薬剤はin vitro/in vivoの薬効評価試験によりB細胞からの抗体産生を抑制する作用を有することが検証された。また患者末梢血単球における数種のイオンチャンネルの発現を健常人単球と比較し、患者単球において発現が亢進しているイオンチャンネルを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
前年度細胞株を用いたスクリーニングで見出した、BAFF受容体を介した単球からのIL-6産生阻害作用を有するイオンチャンネル阻害剤について、SS患者末梢血単球および単球とB細胞の共培養下での細胞活性化に及ぼす影響について検討を進めた。具体的にはBAFFによる単球からのIL-6亢進に対する抑制効果とBAFF刺激を受けた単球とB細胞の共培養によるIgG産生抑制効果を患者由来の細胞を用いて実施し、これらの抑制作用を検証した。さらに当該化合物を自己抗体産生モデルマウス(MRL/lpr)に投与し、投与後14週で抗dsDNA抗体価亢進を抑制することを明らかにした。またSS患者末梢血単球における複数種類のイオンチャンネル発現をFACS法を用いて解析したところ、健常人と比較して患者単球に有意に高く発現するチャンネルを見出した。これらの結果より、研究はおおむね順調に進んでいると考えている。
SS患者単球上に高発現しているイオンチャンネルに焦点をあて、当該チャンネル特異的な阻害剤(市販)を用いて、単球およびB細胞の機能抑制作用を検証する。具体的にはBAFFによる単球からのIL-6亢進に対する抑制効果とBAFF刺激を受けた単球とB細胞の共培養によるIgG産生抑制効果を患者由来の細胞を用いて実施し、これらの抑制作用を検証する。また当該チャンネルとBAFF受容体を介した刺激の細胞内情報伝達経路の解明のため、細胞が刺激を受けた際にリン酸化される蛋白質を網羅的に解析する。一方で当該チャンネル特異的阻害剤について自己抗体産生モデルマウスを用いて薬効評価のため抗dsDNA抗体価や尿たんぱくの亢進に対する影響を検討する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
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