研究課題
シェーグレン症候群(SS)は国の定める難病であり、患者のQOLは著しく害されるにも関わらず、著効を示す治療薬の存在しないアンメットメディカルニーズである。病態形成機序の詳細は不明であるが、B細胞の機能亢進が病態に深く関与していることは多く報告されている。我々はシェーグレン症候群(SS)の病態に深く関わるB細胞活性化因子(BAFF)がその受容体(BR3)と結合しイオンチャンネルを介した経路で単球やB細胞を活性化し、病態形成に関与することを見出し、この機序を阻害する化合物を得ることに成功した。具体的にはこの化合物がin vitro評価系を用いて患者末梢血単球を介してB細胞の活性化を抑制することや自己免疫疾患モデルマウスを用いて自己抗体産生を抑制することを明らかにした。平成30年度は当該化合物の有効性を示す機序の解明に取り組み、当該化合物が患者単球上に多く発現しているイオンチャンネルを介して単球でのBAFFシグナルを阻害することによりB細胞の活性化を抑制していることを明らかにした。これに加えて当該イオンチャンネル阻害作用を有する既知化合物を用いてリポジショニングを実施した結果、これらの化合物が単球やB細胞のBAFFによる活性化を抑制することを見出し、BAFFシグナルとイオンチャンネルは免疫担当細胞活性化に関与していることが裏付けられた。さらに自己抗体産生モデルであるMRL/lprマウスを用いて、当該化合物の薬効試験を実施し、本化合物が脾臓B細胞を減少させ、涙腺や腎臓などの組織へのB細胞浸潤を抑制することを見出した。さらに構造変換により得られたいくつかの構造類似体はin vitroにおけるBAFFによる単球からのIL-6産生促進作用やBAFF刺激単球とB細胞の共培養によるIgG産生およびin vitroでのB細胞分化評価系に対してより強い抑制作用を有することが明らかになった。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件) 産業財産権 (1件)
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