研究課題
FcγレセプターIIB(FcγRIIB)欠損(B6.FcγRIIB-/-)マウスは、SLAM ファミリー遺伝子異常と組み合わさることで関節リウマチ(RA)を自然発症する。このマウスに、Toll様受容体7(TLR7)の重複が存在するYaa(Y-linked autoimmune acceleration)遺伝子を導入し、FcγRIIB-/-Yaaマウスを作製したところ、RAは発症せず、全身性エリテマトーデス(SLE)に類似した腎糸球体腎炎を呈した。この結果からその原因となる脾臓サイトカインの変化を調べたところ、FcγRIIB-/-マウスと比較してFcγRIIB-/-Yaaマウスでは、IL-10 とIL-21のmRNAの発現が有意に増加していることが判明し、特にIL-10 において顕著であった。我々は、SLEモデルマウスとRAモデルマウスの疾患特異性決定においては、IL-10が重要な鍵となっている可能性を考えた。SLEモデルであるFcγRIIB-/-Yaa マウスとIL-10欠損マウスを交配させることにより、IL-10をヘテロで欠損するFcγRIIB-/-IL-10+/-マウス、FcγRIIB-/-IL-10+/-Yaa マウスの作製に成功した。これらのマウスから、IL-10をホモで欠損するFcγRIIB-/-IL-10-/-マウス、FcγRIIB-/-.IL-10-/-Yaaマウスを作製を試みたが、それらのマウスはどのストレインにおいても生後まもなく死亡する結果となった。我々は、SLEの自然発症モデルマウスのFcγRIIB-/-Yaaマウスに対して、IL-10の阻害作用を有する抗IL-10抗体投与によるIL-10の抑制実験を行った。その結果、蛋白尿減少効果は認めず、死亡率減少効果も認めなかった。以上よりこのSLE疾患モデルにおいてはIL-10抑制の治療効果は認めなかった。
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