研究課題/領域番号 |
16K09910
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
加藤 智啓 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (80233807)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 関節リウマチ / 滑膜細胞 / Layilin / 上皮間葉移行 |
研究実績の概要 |
関節滑膜細胞におけるlayilin(LAYN)依存性上皮間葉移行(EMT)様変化とその影響をin vitro及びin vivoの両面から検討した。 in vitro研究として、TNF-αにより関節滑膜細胞がEMTのマーカー及び形態的変化を示すか否か、そして、これらがLAYNを介するか否かを検討した。滑膜細胞株(Immortalized human synovial membrane fibroblasts-SV40, HSF, abm社)及び関節リウマチ(RA)患者由来滑膜細胞(2検体)のLAYN発現をsmall interfering RNA (siRNA)を用いて特異的に抑制し、TNF-α刺激によるEMT様変化の有無を調べた。並行して、コントロールsiRNAを導入した細胞で同様の検討を行った。定量PCRによるSnailなどのEMTマーカーのmRNA測定によりEMTを評価した。HSFでもRA患者由来滑膜細胞でもLAYNの発現はTNF-α刺激により増加する傾向にあった。また、TNF-α刺激の有無に関わらず、HSFではLAYN発現抑制によりSnailの発現は増加した一方で、RA患者由来滑膜細胞では減少した。この点については細胞株種または手術検体数を増やして検討を続ける。 in vivo研究としては、CRISP/Cas9法を用いて、LAYN欠損マウスの作製を進めた。LAYN遺伝子中の標的DNA配列を決定後、ベクターを作製し、LAYNを標的としたガイドRNAを合成した。DBA/1Jマウスの受精卵にガイドRNA及びCas9 mRNAを導入し、細胞期胚を仮親マウスの卵管に移植した。妊娠した仮親より仔マウスF0(計40匹、♂19匹・♀21匹)を得た。♂19匹を遺伝子判定に供した結果、6匹にLAYN欠損が認められた。次年度、野生型♀と交配し、ヘテロのLAYN欠損マウス(F1)を作製する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
関節滑膜細胞におけるlayilin依存性上皮間葉移行(EMT)様変化とその影響をin vitro及びin vivoの両面から検討した。平成28年度計画に記した内容と照らし合わせると、in vitro及びin vivoの両面とも、その内容に沿った形で研究遂行されたと考えられるのでおおむね順調に進行しているとする。
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今後の研究の推進方策 |
in vitro研究では、関節リウマチに加え変形性関節症(OA)患者の関節置換術等の手術検体から滑膜細胞を分離培養し、実験に用いる。OA患者由来滑膜は、サイトカインの影響をRA患者由来滑膜ほどには受けていないと考えられ、本研究にはRA患者由来滑膜よりも適している。本細胞を用いて、LAYN発現を特異的に抑制し、TNF-α及びTGF-β刺激によるEMT様変化の有無を調べる。さらにTNF-α誘導性EMT様変化後の滑膜細胞の増殖能や骨浸潤能を測定する。また、TNF-αからLAYNへの経路についてNF-κBを介しているか否かを検討する。また、マイクロアレイもしくはプロテオミクスの手法により、LAYNの影響を受ける遺伝子もしくはタンパク質の検出を行う。抗LAYN抗体、あるいは上記でLAYN経路を遮断できる分子が同定された場合、それを用いてLAYNを標的として滑膜細胞増殖や骨浸潤能を抑制することが可能であるか否かを決定する。同様の検討を場合によっては滑膜細胞株でも行う。 in vivo研究としては、引き続きLAYN欠損マウスの作製を行う。現在ヘテロのLAYN欠損マウス(F1)同士を交配し、ホモ化することでLAYN欠損マウスを系統化し、そのフェノタイプの解析を行う。さらに、コラーゲン誘導性関節炎における発症率と重症度を、野生型マウスとLAYN欠損マウスで比較し、LAYNの関節炎発症における役割を明らかにする。抗LAYN抗体、あるいはLAYN経路を遮断できる分子が同定された場合、それを用いて通常マウスでのコラーゲン誘導性関節炎の予防あるいは治療が可能か否かを検討する。
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