研究実績の概要 |
関節滑膜細胞におけるライリンの上皮間葉移行(EMT)様変化との関連を含めその機能を明らかにするためにin vitro及びin vivoの両面から検討した。 in vitro研究では、ヒト滑膜線維芽細胞株(HSF)で、無刺激及びTNF-α刺激でライリンの発現抑制が蛋白質発現にどのように影響するかについて蛍光標識二次元ディファレンスゲル電気泳動解析システムを用いて網羅的に調べた。無刺激及びTNF-α刺激時にライリン発現抑制によりスポット強度が±1.3倍以上変化した蛋白質スポットがそれぞれ53個及び34個あった。そのうち同定された24個の蛋白質中、15個(62.5%)が、EMT関連蛋白質であった(Shimazaki K et al., 2018)。このことからライリンはHSFでEMT関連蛋白質の調節に深く関与していることが示唆された。加えて、浸潤性の高い悪性神経膠腫細胞では、ライリンが、EMT促進に働く転写因子snai1を介して浸潤能に寄与することを見出した(論文投稿中)。このことから関節リウマチ滑膜細胞の浸潤能にもライリンが寄与する可能性が考えられた。 in vivo研究では、ライリン欠損マウスを作製後、ホモ型のライリン欠損マウスを系統化し繁殖させた。体重・臓器重量・血液検査(赤血球数、血小板数、血糖、コレステロール、クレアチニンなど)などのフェノタイプは野生型と変わらなかった。コラーゲン誘導性関節炎(CIA)実験では、ライリン欠損マウスでCIA初期の関節炎スコアが有意に高く、CIA発症が早まっている可能性が考えらえた。また、それ以降も野生型と比較してその重症度が高い傾向が認められた。今後、マウスの匹数を増やし、発症時期前後は細かく関節炎スコアをとることで、ライリンが関節炎発症に関与しているかどうか見極め、ライリンの関節炎発症における役割を明らかにする予定である。
|