研究課題/領域番号 |
16K09912
|
研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
海江田 信二郎 久留米大学, 医学部, 講師 (20330798)
|
研究分担者 |
星野 友昭 久留米大学, 医学部, 教授 (00261066)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | マクロファージ / 関節炎 / 炎症性サイトカイン |
研究実績の概要 |
M2 CD163陽性マクロファージの関節炎における機能解析を行っている。マウス関節炎モデルにおいてコラーゲン誘導関節炎(CAIA)を用い、CD 163 KOマウスで関節炎症が増悪するため、CD163陽性マクロファージは関節炎症抑制的に作用することを確認した。また骨びらんスコアも増悪するため関節炎症に伴う骨破壊への関与も示唆された。そのメカニズムに関して、病理組織学的研究において、CD163KOマウスで関節炎局所への炎症細胞浸潤を著明に認め、またケモカインCKCL1の有意な上昇を伴うことからCD163陽性マクロファージはケモカイン産生を介した関節炎症誘導に関与する可能性が考えられた。炎症性サイトカイン産生に関して検討を行い、CD163 Koマウス関節炎症局所でIL-6やIL-1βなどの発現亢進をRNAレベルで確認し、CD163陽性マクロファージはケモカインのみならず炎症性サイトカイン産生抑制に作用する可能性が考えられる。そのメカニズムに関しては、マウス関節炎モデルにおいて、免疫複合体による炎症誘導が重要であるためマウス腹腔由来マクロファージを免疫複合体(IgG)刺激を行ったが、CD163 KOとcontrol WTマクロファージと比較し、炎症性サイトカイン産生などに有意差を認めなかった。CAIAにLPSを用いるため、LPSを使用せずCAIAを誘導すると、関節炎誘導は可能であったが、CD163 Koマウスとコントロールマウス間で有意差が消失するため、このマウス関節炎モデルではLPS刺激の重要性が推測される。現在LPSに対するマクロファージの反応性についてCD163抗原の有無で変化を来すか、マウス腹腔由来マクロファージを用い、in vitroで研究を行っている。CD163陽性マクロファージが関節炎症抑制的に作用することが明らかにしているため、メカニズム解析が進めば論文発表する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
in vitroでマクロファージを刺激・活性化させる実験に時間を要している。LPS刺激による検討を行っているが、感染症で重要なLPS刺激を行うことが関節炎におけるメカニズム解析に役立つのか、検討を行ったが、CAIAをLPSを使用せず誘導した場合はCD163KOマウスおよびWTコントロールマウスで有意差は明らかではなく、このマウス関節炎モデル(CAIA)ではLPS刺激が重要であるため、現在LPS刺激による実験を行っている。マクロファージが接着細胞であるため、線維芽細胞との関連性に関する研究は、ともに接着細胞である点が共培養による評価を困難にしているため、2細胞間の接着を阻害し実験を行うことを検討している。
|
今後の研究の推進方策 |
マクロファージに特異的に発現するCD163抗原の有無が関節炎重症度に影響することを明らかにしている。CD163抗原欠損のみで炎症性サイトカインやケモカイン産生が抑制されるその作用機序に関しては細胞内伝達分子の挙動へ影響が考えられるため、現在検討を行っている。CD163抗原の関節炎における役割は明らかであり、分子標的治療となりうるか、その発現のメカニズムに関しても研究を進める予定である。関節滑膜部におけるマクロファージと線維芽細胞の関係性に注目しているが、ともに接着細胞であり、in vitro coculture実験が困難となっている。そのためその機能的関連性についてはcell contactを阻害し、可溶性因子のみの解析を行う予定である。
|