研究実績の概要 |
活性化好中球から排出されるクロマチン網であるNETsには、多くの細胞内構成蛋白が含まれ、細菌の捕捉以外の殺菌作用のみならず、血栓形成、癌転移、そして膠原病疾患の発症や自己抗体産生にも大きな役割を果たしていることがわかってきた。私たちは、膠原病疾患において、NETsの構成成分の内容、NETsの量、刺激に対する反応の違いが各疾患で異なり、病変局所のみならず、全身症状にも影響を与え、病態形成に重要な役割を果たしている可能性が高いという仮説を立てた。好中球は寿命が短く解析が難しい細胞であるが、iPS細胞より誘導した好中球は比較的寿命が長いため、解析が行いやすいと期待される。患者末梢血からiPS細胞をさらに樹立するとともに、NETsの簡便な確認方法の確立とその定量化を検討した。 結果 1)RA患者1例、成人発症スティル病患者1例、家族性地中海熱患者5例についてiPS細胞を樹立した。2)好中球への分化の条件決めが確立され、健常者iPS細胞から純度の高い好中球が得られるようになった。3)RA患者からネガティブセレクションで好中球を分離、98%以上の純度で採血から30分以内に分離可能となった。4)健常者iPS細胞由来好中球を24穴プレートで培養、底に円形のガラススライドを挿入、PMA刺激後、DNA(ヘキスト), ヒストン(標識モノクローナル抗体), MPO(標識モノクローナル抗体), エラスターゼ(標識モノクローナル抗体)、でNETsを検出した。5)RA患者、血管炎患者の末梢血由来好中球では、NETsは検出できなかった。
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