研究課題
代表的な炎症性自己免疫疾患である膠原病に共通しているのは、自己免疫寛容の破綻であり、自己反応性B細胞による自己成分に対する抗体産生を特徴とする。免疫抑制機構の中心的サイトカインはTGF-βとIL-10の2つであるが、共に免疫に対して促進性にも抑制性にも働くという側面があり、臨床応用への大きなハードルとなっている。本課題において申請者は、TGF-βとIL-10のcombinationによる自己抗体制御機構を解明することを目的とした。平成28年度は、Toll-like receptor(TLR)刺激においてTGF-β、IL-10単独では抗体産生は促進されるが、両サイトカインの共存により抗体産生は完全に抑制されることを示し、解糖系や酸化的リン酸化、アミノ酸代謝など代謝パスウェイに影響のある遺伝子群の抑制および、mTORシグナル伝達系が、TGF-βとIL-10を共添加したLPS刺激B細胞で特異的に抑制されていることを明らかにした。H29年度は、in vitroでもNP-KLH/CFA免疫下におけるTGF-βとIL-10の協調的な液性免疫制御能を検証した。さらにTLR7 agonistであるイミキモドの皮膚への塗布によるSLEモデルマウスにおいても、TGF-βとIL-10は協調して自己抗体産生を著しく抑制した。最終年度である平成30年度は、T細胞特異的TGF-β3コンディショナルノックアウトマウスを用いた検討にて、生体内における液性免疫応答においてもT細胞の産生するTGF-β3が液性免疫制御機構において中心的役割を果たすことをフローサイトメトリーおよび遺伝子発現解析により確認した。さらに、ヒトB細胞においてもTGF-β/IL-10のサイトカインシナジー効果を認めた。以上の検討により、ヒト自己免疫疾患に対するサイトカインコンビネーションセラピーの展開の有用性が示唆された。
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http://ryumachi.umin.jp/about/research.html