研究課題/領域番号 |
16K09922
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
佐々木 由紀 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 助教 (50454757)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自己炎症 / プロテアソーム |
研究実績の概要 |
自己炎症症候群とは、感染や自己免疫応答を伴わない炎症により引き起こされる疾病である。これまでに、自己炎症病態に著明な脂肪萎縮伴う遺伝性症候群JASLの原因遺伝子として、免疫プロテアソームのサブユニットであるPSMB8 ミスセンス変異が同定されている。本研究ではPSMB8ミスセンス変異が免疫プロテアソームの機能を低下させ炎症応答を誘導している分子機構を明らかにし、免疫プロテアソームによるヒト免疫システムの制御機構を解明する事を目的とする。 JASL と同様の変異を持つPsmb8 ミスセンス変異ノックインマウス(Psmb8-KI)を樹立し解析を行った。Psmb8-KIはJASL B cellと同様にプロテアソーム分子集合が障害され、分子集合中間体が蓄積し成熟型への変換が障害されていた。しかし、プロテアソーム活性は野生型(wt)と比較して減弱はしていなかった。これはβ5の発現がwt と比較して著明に増強しているためにプロテアソーム活性が一部補完されているからと考えられた。 Psmb8-KIをSPF環境下で飼育しているが自己炎症を発症しなかったため、イミキモド塗布乾癬様皮膚炎症誘導モデルを用い解析を行ったところ、Psmb8-KI マウスはwtと比較して炎症発症が早期でかつ増悪し、炎症部位での炎症性サイトカイン遺伝子発現増強が見られた。炎症サイトカインの関与を見るために各種サイトカイン阻害抗体を用いてイミキモド塗布乾癬様皮膚炎症誘導をしたところ、炎症は軽減するがPsmb8-KI マウスの炎症の方がなおも重度であった。KIにおける増悪因子を見つけるために、プロテアソーム阻害剤とともに培養したマウス細胞株のマイクロアレイ解析、またイミキモド塗布KIマウス耳組織にて発現増強する遺伝子を探索した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) プロテアソーム分子集合の障害メカニズム JASL B cellでは細胞あたりのプロテアソームの量が低下し、かつ各プロテアソームの機能も障害されていることが明らかとなったが、Psmb8-KIではJASL B cellで見られたプロテアソーム活性の減少が見られなかった。それはβ5サブユニットの発現がwt と比較して著明に増強しているためにプロテアソームの活性が補完されているからと考えられた。現在Psmb5(β5)ノックアウトマウスを樹立中であり、Psmb5ノックアウトPsmb8-KIマウスを作製する。 (2)プロテアソームに異常のある動物モデルの検討 JASLの特徴的な臨床症状に皮膚炎症があることから、イミキモド塗布乾癬様皮膚炎症誘導モデルを用い解析を行った。Psmb8-KI マウスはwtと比較して炎症発症が早期でかつ増悪し、さらに炎症部位での炎症性サイトカイン遺伝子発現増強が見られた。炎症サイトカインの関与を見るために各種サイトカイン阻害抗体を用いてイミキモド塗布乾癬様皮膚炎症誘導をしたところ、炎症は軽減するがPsmb8-KI マウスの炎症の方がなおも重度であった。KIにおける増悪因子を見つけるために、プロテアソーム阻害剤とともに培養したマウス細胞株のマイクロアレイ解析、またイミキモド塗布KIマウス耳組織にて発現増強する遺伝子を探索した。今後候補分子に対する阻害剤を用いた実験を行う。
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今後の研究の推進方策 |
(1)プロテアソームに異常のある動物モデルの表現型の解析 Psmb8-KIマウスに加え、全身発現系rosa26-Psmb8 ミスセンス変異遺伝子改変マウス、Psmb5(β5) ノックアウトマウス、Psmb5 (β5)ノックアウトPsmb8-KIマウスを作製し、表現型の検討を行う。a)マイクロアレイ解析を行い、対照マウスと比較して遺伝子発現の差があるかを網羅的に解析する。b)各種マウス細胞のプロテアソーム活性を測定する。c)体重変化や肝臓、脾臓の腫大を重量計測で、皮膚、筋肉組織をHE染色、オイルレッドO染色、免疫化学染色等の組織学的解析を行う。d)脾臓やリンパ節におけるリンパ系細胞のマーカー解析をFACSにて行う。e)各種マウスの脂肪組織より脂肪前駆細胞を単離培養し脂肪細胞分化誘導実験を行い、脂肪分化に関連する遺伝子発現を定量PCRにて、脂肪生成をオイルレッドO染色にて検討する。f)高脂肪食投与実験を行い、脂肪生成について比較検討する。 (2)プロテアソームに異常のある動物モデルの炎症誘導実験 JASLの特徴的な臨床症状に皮膚炎症がある。イミキモドを皮膚(背中、耳)に塗布することで誘導される乾癬様皮膚炎モデルを用い、各種マウスを比較する。a)経時的に炎症のスコア(発赤、落屑)をとり、耳の腫れの厚さを計測する。炎症部位組織のHE染色を行い観察する。b)経時的に血清中の抗体量、炎症性サイトカインをELISAで測定し。炎症部位における炎症性サイトカインや関連分子の遺伝子発現を、定量PCRを用いて測定する。c)炎症部位に浸潤している細胞を単離し、FACSにて細胞のマーカー解析を行う。d)b)で炎症性サイトカインや関連分子に差がある場合、経時的に阻害抗体や阻害剤を投与し、炎症のスコア、耳の腫れを検討する。
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