自己炎症症候群とは、感染や自己免疫応答を伴わない炎症により引き起こされる疾病である。これまでに自己炎症病態に著明な脂肪萎縮伴う遺伝性症候群JASLの原因遺伝子として免疫プロテアソームサブユニットPSMB8ミスセンス変異が同定されている。本研究ではPSMB8変異が免疫プロテアソームの機能を低下させ炎症応答を誘導している分子機構を明らかにし、免疫プロテアソームによる免疫システム制御機構の解明を目的とする。 JASLと同様の変異を持つPsmb8ミスセンス変異ノックインマウス(Psmb8-KI)を樹立し解析を行ったところ、Psmb8-KI細胞はJASL患者B細胞と同様にプロテアソーム分子集合が障害され、分子集合中間体が蓄積し成熟型への変換が障害されていた。しかし、プロテアソーム活性は野生型と比較して減弱しておらず、Psmb5発現が野生型と比較して著明に増強しているためにプロテアソーム活性が一部補完されていると考えられた。そこでPsmb8-KIで、さらに全身または各種免疫細胞でPsmb5が欠損するマウスを作製している。 Psmb8-KIをSPF環境下で飼育しているが自己炎症を発症しなかったため、イミキモド塗布乾癬様皮膚炎症誘導モデルを用い解析を行ったところ、Psmb8-KIは野生型と比較して炎症発症が早期でかつ増悪し、炎症部位での炎症性サイトカイン遺伝子発現増強が見られた。各種サイトカイン阻害抗体を用いて実験したところ、炎症は軽減するがPsmb8-KIの方がなおも重度であった。炎症部位組織にて発現増強する遺伝子を探索した結果、X遺伝子の関与が推測され、X関連経路阻害剤を投与したところイミキモド塗布による炎症は劇的には抑えられないものの、Psmb8-KIと野生型の炎症の差がほとんどなくなることが見いだされた。現在X経路ノックアウト・Psmb8-KIを作製中で、より詳細な検討を行う。
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