研究課題/領域番号 |
16K09923
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
三苫 弘喜 九州大学, 大学病院, その他 (60467909)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | IL-1β / インフラマソーム / CD16陽性単球 |
研究実績の概要 |
昨年度までの研究で高疾患活動性の関節リウマチ(RA)やベーチェット病(BD)症例では末梢血単球からの活性型IL-1βの分泌亢進が認められた。末梢血単球のどの分画がIL-1β分泌に関与しているかを健常人で検討した。CD14陽性CD16陰性のclassicalと比較して、CD16陽性のintermediate, non-classicalではIL-1β分泌能が高かった。定常状態でもpro-IL-1βやNLRP3の発現量がCD16陽性単球で高かった。インフラマソーム活性化の指標である活性型caspase-1をフローサイトメトリーで検討したところ、各分画間で有意な差は認めなかった。もうひとつのインフラマソーム関連サイトカインである活性型IL-18の産生はいずれの分画においてもほとんどみられなかった。以上よりCD16陽性単球ではNF-kB経路の活性化が活性型IL-1βの分泌亢進の主たる要因と推察される。RAやBD症例ではCD16陽性単球が増加している症例があり、このことが末梢血単球のIL-1β分泌亢進の一因と考えられた。 次にIL-1β分泌を抑制する製剤について検討を行った。コルヒチンは既報の通り高濃度でのみLPS刺激単球からのIL-1β分泌抑制効果を示した。さらにヒドロキシクロロキンもLPS刺激単球からのIL-1β分泌を有意に抑制した。 マクロファージではインフラマソームの活性化に伴うGSDMD membrane poreの形成により細胞質成分が細胞外へ放出し、pyroptosisという細胞死へ至ることが示されているが、LPS刺激した健常人、RAおよびBD症例の末梢血単球では細胞質成分の細胞外への放出はほとんど認められず、また細胞死もみられなかった。従って、活性化IL-1β分泌はマクロファージとは異なる経路を介していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
成人スティル病、間質性肺炎合併皮膚筋炎症例ではインフラマソームの活性化は主として臓器間質のマクロファージで起こっており、骨髄、肝臓、肺などの生検組織からの解析を予定しているが、該当する症例がおらず実施できていない。 NLRP3の免疫沈降を複数の抗体で行ったが、インフラマソーム複合体形成を阻害せずにNLRP3を沈降できる抗体がなく、NLRP3の沈降でNLRP3インフラマソーム複合体を精製することは困難であった。NLRP3にタグをつけたプラスミドをTHP-1細胞株に遺伝子導入したが、蛋白の恒常的発現がえられなかった。従って他のインフラマソーム構成因子であるASC、caspase-1による免疫沈降でインフラマソーム複合体を精製する必要がある。最近ではNLRP3以外のNLRC4やNLRP1インフラマソームの病態形成への関与が明らかになってきており、これらの複合体の解析も意義があると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1.NLRP3インフラマソーム抑制因子の同定:THP-1マクロファージでインフラマソーム構成因子(ASC, caspase-1)の免疫沈降を無刺激およびnigericin刺激後で行い、質量分析法で結合分子を探索する。得られた分子をTHP-1細胞株でshRNA法によりknockdownし、抑制因子を同定する。 2.インフラマソーム阻害剤の探索:インフラマソームの活性化を抑制する化合物について、化合物ライブラリーを用いてヒトマクロファージでスクリーニングを行う。スクリーニングで効果が得られたものについて、その作用機序、細胞毒性の有無について解析する。 3.インフラマソーム活性化の他の細胞への影響の検討:インフラマソームが活性化したマクロファージが周囲の細胞に与える影響について検討を行う。インフラマソームリガンドで刺激をしたマクロファージと形質細胞様樹状細胞、骨髄系樹状細胞、線維芽細胞をそれぞれ共培養する。樹状細胞ではサイトカイン産生をLuminexとIFN-α ELISA kitで測定し、線維芽細胞では細胞増殖とサイトカイン産生(Luminex)、膠原線維の産生を評価する。中和抗体でIL-1βとIL-18のシグナルを阻害した条件でも同様の実験を行う。 4.成人スティル病、間質性肺炎合併皮膚筋炎症例において、炎症組織のマクロファージでのインフラマソーム活性化の有無、活性化している場合はどのインフラマソームの活性化なのかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は昨年度購入した消耗品、試薬を用いて実験を行うことができたため、物品費の使用がなかった。次年度はshRNAのためのプラスミド作成やELISA、Luminex等の物品の購入に予算を使用予定である。
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