研究課題
アレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)は、気道内真菌に対する免疫・アレルギー応答により発症する重症気道疾患である。本研究ではABPM患者における気道真菌叢(mycobiota)を解析し、気道真菌叢とABPMの臨床像や免疫学的病態との連関を明らかにすることを目的としている。1.微生物叢解析システムの構築:初年度は次世代シーケンサーを用いた微生物叢解析に必要なシステムの構築を行った。IonPGM、MiSeqなどの大型次世代シークエンサーを用い、直接シークエンス法と18S ribosomal RNAのITS領域や16S ribosomal RNAなどの真菌・細菌特異的配列をPCR増幅する方法を比較検討した。rRNA PCRの有無で微生物叢解析の結果は異なり、PCR産物での解析結果の方が培養結果と合致度が高かった。特にヒト由来のDNAの混入が多い検体では直接シークエンス法での精度が低かった。小型でフィールド研究でも使用可能な次世代シークエンサーMinIONについても検討したが、IonPGM、MiSeqなどの大型シークエンサーと比べて精度が低かった。この点についてソフトウエアの遺伝子配列アライメント条件を緩めることである程度遺伝子リード上位の微生物での相似が若干高めることは可能であったが、デバイス自体の精度が不足していると考えられた。2.気道内真菌叢と好酸球性粘液栓との関連:アレルギー性気管支肺真菌症の病態の主体と考えられる好酸球性粘液栓の形成において、真菌が好酸球ETosisにともなうDNA trap放出を介して、粘性の高い粘液栓形成に寄与していることが示唆された(未発表データのため詳細は省略)。
3: やや遅れている
2016年度の研究では真菌叢解析システムの構築を優先的に進めたため、予定よりも臨床検体の解析件数が少なかった。
1.ABPA患者の気道内真菌叢解析初年度の検討により、気道真菌叢解析には18S ribosomal RNAのITS領域の真菌特異的配列をPCR増幅し、大型次世代シークエンサーIonPGMを用いて解析するシステムの準備が整った。今後は実際にABPM患者の気道由来サンプル(喀痰、気管支洗浄液、粘液栓)を用いての検討を開始する。また、同様の病態を呈する好酸球性鼻副鼻腔炎症例でも検討を行い、上気道と下気道での真菌叢の比較検討を行う。2.気道内真菌叢と好酸球性粘液栓との関連アレルギー性気管支肺真菌症の病態の主体と考えられる好酸球性粘液栓の形成において、アスペルギルスが好酸球ETosisにともなうDNA trap放出を介して、ABPM患者の気道で認められる粘性の高い粘液栓形成に寄与していることが確認できた。今回の検討では標準真菌株を用いたが、今後は、我々が真菌バンクに蓄積してきた臨床分離真菌株を用いて同様の検討を行い、好酸球ETosisを誘導しやすい真菌の特定とその特性を明らかにしていく。
2016年度で解析システムが確立したことから、2017年度に真菌叢解析を進めるための費用として充当する予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 オープンアクセス 3件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
Respir Invest
巻: 55 ページ: 93
10.1016/j.resinv.2017.02.002
Respirol Case Rep
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Allergol Int