研究課題/領域番号 |
16K09929
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研究機関 | 北陸大学 |
研究代表者 |
大黒 徹 北陸大学, 薬学部, 教授 (80291409)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | RNAウイルス / 抗ウイルス薬 |
研究実績の概要 |
ファビピラビル存在下でインフルエンザウイルスの培養を繰り返し、薬剤耐性株あるいは感受性が変化したウイルスの分離を試みた。インフルエンザウイルスはRNA合成に関わる遺伝子産物として酵素活性を担うPAとPB1、PB2の3つの蛋白質をコードしている。ファビピラビル存在下での培養で、感受性が変化したインフルエンザウイルスが得られたため、プラーク減少法で50%阻害濃度とRNA合成に関わる3つの遺伝子の塩基配列を調べ、アミノ酸変異を検討した。その結果、ファビピラビルに対し明らかな耐性を獲得したウイルスを得る事はできなかった。 そこで、インフルエンザウイルスとは異なり、RNA合成を1つの遺伝子産物で担っているポリオウイルスを用いて、ファビピラビル存在下で培養を行い、薬剤感受性変異株の分離とその変異部位の同定を試みた。得られた感受性変異株の50%阻害濃度(IC50)、親株とのIC50の比、アミノ酸変異部位について検討をおこなった。今回得られたポリオウイルス株のアミノ酸変異の箇所について、ポリオウイルスのRNA依存性RNA合成酵素の構造と、ファビピラビルや、アデノシン、グアノシンとドッキングシミューレーションを行なった結果から、次のように推定される。N17S(鋳型 RNAとの結合に関与)、D98G(RNA依存性RNA合成酵素のHelix構造に影響)、K138R(塩基性アミノ酸同士の置換のため影響は少ない)、K394E(rNTPのリン酸基との相互作用)。さらに、RNA依存性RNA合成酵素の発現系を作成し、結晶化解析を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ポリオウイルスのRNA依存性RNA合成酵素をコードしている3D遺伝子をPCRで増幅し、大腸菌蛋白質発現ベクターに組み込んだ。GSTまたはHisタグとの融合蛋白質としてポリオウイルスRNA依存性RNA合成酵素の発現系を構築し、SDS-PAGEによってその発現を確認した。しかしながら、GSTならびにHisのどちらのタグとの融合RNA依存性RNA合成酵素も、大腸菌発現系で不溶性となり、ファビピラビルとの共結晶化からX線結晶解析を行うことができなかった。さらに、コールドショック発現も試みたが、ポリオウイルスRNA依存性RNA合成酵素の可溶化は困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
大腸菌発現系でのポリオウイルスRNA依存性RNA合成酵素の可溶化が困難であったことから、今後はバキュロウイルス発現や真核発現系に変更し、酵素活性を有する形で発現させ、可溶化を試み、酵素活性測定とファビピラビルによる阻害実験を評価できるアッセイ系を構築する。この系が確立できたら、黄熱ウイルス、SARSコロナウイルスやMERSコロナウイルス等のヒトに高い致死性を示すRNAウイルス感染症の原因ウイルスのRNA合成酵素についても、人工遺伝子から発現系を作製する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ポリオウイルスのRNA依存性RNA合成酵素をコードしている3D遺伝子をPCRで増幅し、大腸菌蛋白質発現ベクターに組み込んだ。GSTまたはHisタグとの融合蛋白質としてポリオウイルスRNA依存性RNA合成酵素の発現系を構築し、SDS-PAGEによってその発現を確認した。しかしながら、GSTならびにHisのどちらのタグとの融合RNA依存性RNA合成酵素も、大腸菌発現系で不溶性となり、ファビピラビルとの共結晶化からX線結晶解析を行うことができなかった。さらに、コールドショック発現も試みたが、ポリオウイルスRNA依存性RNA合成酵素の可溶化は困難であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
大腸菌発現系でのポリオウイルスRNA依存性RNA合成酵素の可溶化が困難であったことから、今後はバキュロウイルス発現や真核発現系に変更し、酵素活性を有する形で発現させ、可溶化を試み、酵素活性測定とファビピラビルによる阻害実験を評価できるアッセイ系を構築する。
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