研究実績の概要 |
ファビピラビルはRNAウイルスのRNA依存性RNA合成酵素(RdRP)を阻害することでRNA複製を停止させるのが特徴で、抗インフルエンザウイルス薬として承認された薬である。ファビピラビルがウイルスのRdRPを阻害するためには、リボースとリン酸が付加されて最終的にファビピラビルリボース三リン酸に変換される必要がある。その第一段階として、ファビピラビルにリボース一リン酸を転移させる酵素がヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)であることが報告された(Mol. Pharmacol., 84:615-629, 2013)。しかしながら、ファビピラビルはHGPRTに対して、本来の基質であるヒポキサンチンやグアニンに比べ親和性は非常に低い。そこで、ファビピラビルよりさらに優れた抗ウイルス剤の開発を目的に、HGPRTとファビピラビルの誘導体についてシミューレション解析を行い、より親和性が高いと思われるファビピラビルの誘導体をデザインした。 ファビピラビルの6位のフッ素に着目し、水素、塩素、臭素に置換した誘導体を今回使用した。ウイルスはポリオウイルス1型Sabin株を使用し、アフリカミドリザル腎臓細胞に感染させ、抗ウイルス効果はプラーク減少法で検討した。 ポリオウイルスでは、インフルエンザウイルスでの結果とは異なり、ファビピラビルが最も高い抗ウイルス効果を示し、6位のフッ素を水素に置換した誘導体が次に効果が高く、塩素置換、臭素置換誘導体は効果が低かった。
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