研究課題/領域番号 |
16K09930
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
稲井 邦博 福井大学, 学術研究院医学系部門, 准教授 (30313745)
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研究分担者 |
岩崎 博道 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 教授 (10242588)
法木 左近 福井大学, 学術研究院医学系部門, 准教授 (30228374)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 敗血症 / 病理学 / オートプシー・イメージング / 血液培養 / 血球貪食組織球過剰症 / 血清診断 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、2017年度も病理解剖時に右心耳(または下大静脈)と大動脈起始部より動静脈血培養を実施するとともに、entry siteと考えられる領域の喀痰、膿汁、あるいは体腔液を採取して培養を実施し、今年度までに30例を集積し、そのうち現時点で一定の評価可能な25例(敗血症の可能性が高い5例を含む敗血症17例、非敗血症症例8例)を用いて中間検討を実施した。このうち、血球貪食組織球過剰症と敗血症との関連性は、25例中評価可能な19例(敗血症14例、非敗血症4例)において、感度93.3%、特異度100%、陽性的中率100%、陰性的中率80%で、敗血症で血球貪食組織球過剰症が優位に発症していた(p<0.001)。剖検時血液培養陽性との関係は、評価可能な21症例において、感度93.8%、特異度100%、陽性的中率100%、陰性的中率85.7%と、敗血症で優位に血液培養陽性を示していた(p<0.0001)。生前プロカルシトニン、またはプレセプシンが採血されていた17例において、死亡前7日以内に採取されていたプロカルシトニン、またはプレセプシン高値をカットオフ基準とすると、感度77.8%、特異度100%、陽性的中率100%、陰性的中率66.7%で、これも有意に上昇していた(p<0.01)。一方、オートプシー・イメージングにおける血管内ガス、または新たな脳梗塞の発症と敗血症の関係においては、感度80%であるものの特異度は42.9%と低く、統計学的に関連性は認められなかった(p=0.24)。 これまでの検討で、剖検時に敗血症と診断しうるマーカーとして血球貪食組織球過剰症、剖検時血液培養陽性、死亡7日以内のプロカルシトニン、プレセプシン高値が有力な候補となることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、剖検時の培養結果などを30例集積解析し、病理解剖において敗血症の客観的診断に寄与すると考えられるマーカーを少なくとも3種類同定できた。これらのうち、少なくとも一つは我々のこれまでの研究成果を引き継ぐ指標であった。また、病理解剖時の血液培養では半数以上の症例から陽性が得られる可能性が高いことも明らかになりつつある。現在、感染症に関する論文1本を投稿し、また別の症例報告がリバイス中である。上記状況を踏まえ、概ね順調に推移していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年は、さらに20例前後の症例集積を目指すとともに、保存血清を活用して炎症性サイトカインと、骨髄中マクロファージのprofileを、それぞれELISA法、免疫染色法を活用にして明らかにし、スコアリングシステムの構築に繋げる予定である。最終年度終了を待たずに、論文執筆に取りかかる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
サイトカイン等の測定キット購入費用を、検体数の関係で次年度に回す予定としたため。
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