研究課題/領域番号 |
16K09930
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
稲井 邦博 福井大学, 学術研究院医学系部門, 准教授 (30313745)
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研究分担者 |
岩崎 博道 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 教授 (10242588)
法木 左近 福井大学, 学術研究院医学系部門, 准教授 (30228374)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 敗血症 / 病理学 / 血液培養 / 血球貪食組織球過剰症 / プロカルシトニン/プレセプシン |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、病理解剖時に右心耳(または下大静脈)と大動脈起始部より動静脈血培養を実施するとともに、entry siteと考えられる領域の喀痰、膿汁、あるいは体腔液を採取して培養を実施した。今年度までに評価可能47例を集積し、病理学的(血球貪食組織球過剰症:PHP)、細菌学的(血液培養)、及び血液生化学的(プロカルシトニン/プレセプシン値:PCN/PSP)に解析し、敗血症を診断可能とするスコアリング方法を解析した。 中等度以上のPHPは敗血症群29/31例、非敗血症群4/16例に認められ、スコアー化すると、それぞれ2.5 +/- 0.8、0.75 +/- 1.0と敗血症群で有意に増加(p<1x10-7)していた。剖検時の血液培養結果を、組織学的及び生前の血液培養等を加味してスコアー化すると、敗血症群、非敗血症群で、それぞれ2.6 +/- 1.3、0.4 +/- 0.5と敗血症群で有意に増加(p<1x10-7)していた。生前にプラカルシトニンまたはプレセプシンが採取されていた症例のうち、採取日と死亡時敗血症の感度・特異度の予備検討に基づき、死亡前8日以内に採取されたデータをスコアー化すると敗血症群2.3 +/- 1.0、非敗血症群1.1 +/- 0.7とこの項目も敗血症群で有意に増加(p<0.01)していた。これら、3つのスコアーを組み合わせたpositivity total score並びに3項目中2項目以上陽性を示す症例のROC曲線を解析したところ、それぞれのAUCは0.9415、0.9718といずれも高値を示したが、後者がやや高い値を示した。 病理解剖で敗血症が疑われる症例では、剖検時血液培養陽性、中等度以上の骨髄PHP陽性、死亡前8日以内に採血された中等度以上PCN/PSP上昇の2項目以上陽性を示す場合、剖検時に敗血症と診断できることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、剖検時の培養結果などを50例程度集積解析し、病理解剖において敗血症の客観的診断に寄与すると考えられるマーカーを3種類同定するとともに、これらを活用すると客観的に判断できることが明らかになってきた。 若干の追加検討を加えた後、並びに論文執筆を行うとともに、国際学会で発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度よりデータ集積を進めた結果、50例弱の解析可能症例が集積され、上述したように統計学的に有意な結果が得られているが、本年1月以降に剖検した5例の解析が残っており、これらの解析を終了後、論文執筆に取りかかる。 さらに、今年度は剖検時に無菌的な血液培養が、従来以上に容易に実施できる方法の構築を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年度よりデータ集積を進めた結果、50例弱の解析可能症例が集積され、統計学的に有意な結果が得られているが、昨年11月以降に剖検した数例の解析が遅れており、論文執筆・投稿が来年度になると考えられる。 また、来年11月に開催される関連学会会長から、当該研究成果を含む講演を打診され(開催地:ポルトガル・リスボン市)、当該出張にかかる経費が必要となった。
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