研究課題/領域番号 |
16K09932
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研究機関 | 長浜バイオ大学 |
研究代表者 |
伊藤 洋志 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 准教授 (20362387)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 好中球 / オートファジー / 感染症 / 炎症 / 自然免疫 / IL-8 / 細胞死 |
研究実績の概要 |
白血球の一種である好中球は、体内に侵入した細菌に対して旺盛な食作用と強力な殺菌作用を発揮し、生体防御の一次機構において中心的な役割を担っている。本研究は、好中球が果たす諸機能において、細胞内蛋白質の分解機構のひとつであるオートファジーがどのような役割を果たしているかを明らかにし、オートファジー機構を介した好中球機能の制御によって、抗菌薬による治療が奏功しない易感染性患者の多剤耐性菌感染症に対する新規治療法の開発に繋げることを目的としている。 好中球機能におけるオートファジーの役割に関して、好中球の細胞寿命および新たな好中球の炎症巣への動員に重要な役割を果たすIL-8の産生において、前年度に引き続いて興味深い所見を得た。いずれも好中球の働きを正の方向に作用させるものである。その機序のひとつとして、好中球の細胞内蛋白質の関与が示唆された。すなわち、この蛋白質を好中球に対して細胞外から添加すると、好中球の細胞死の抑制とIL-8の産生を認めた。種々の添加条件を検討したところ、この作用は蛋白質の添加条件によっては認められなかった。このことは、好中球の細胞内蛋白が何らかの刺激によって細胞外に放出され、好中球の機能を調整している可能性を示している。好中球の活性化によって誘導されるオートファジーと、この細胞内蛋白質の分解や細胞外への放出に興味深い関連を示すデータを得つつある。 オートファジーを介して好中球機能が調節される可能性とその機序の詳細を明らかにするため、今後さらに実験データを積み重ねる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者は、研究開始初年度となる平成28年度に現所属機関に異動した。平成29年度にかけて所属機関における医学系研究に関する倫理委員会への申請や、動物実験を行うための申請、および研究室の立ち上げ等に要する所属機関内の予算措置等にも時間を要したため、初年度からの進捗の遅れが継続している。平成30年度は、主にオートファジーを介した好中球機能の制御機構について、一定の進展が見られた。期間延長を申請して承認されたことを加味し、進捗状況を「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
種々の刺激条件によって好中球が活性化し、誘導されるオートファジーや細胞死に伴って細胞外に放出される好中球機能に作用し得る蛋白質成分について、さらに解析を進める。 それらの蛋白質成分による好中球の細胞死やIL-8産生への影響についてもさらに解析を進める。 好中球の遊走能や活性酸素産生能、好中球細胞外トラップ(NETs)形成、炎症性サイトカインの産生など、他の機能への影響についても検討する。 これらの実験により、オートファジーを介した好中球の機能制御の機序を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者は、研究開始初年度となる平成28年度に現所属機関に異動した。平成29年度にかけて所属機関における医学系研究に関する倫理委員会への申請や、動物実験を行うための申請、および研究室の立ち上げ等に要する所属機関内の予算措置等にも時間を要したため、初年度からの進捗の遅れが継続している。期間延長を申請して承認されたため、本年度までに遂行できなかった実験を次年度に持ち越して行う。次年度使用額はこの経費に充てる。
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