研究課題
本研究は、慢性肺アスペルギルス症の病態と呼吸器、腸管のマイクロバイオームとの関連性について解析した研究である。最初の2年で慢性アスペルギルス感染症の抗体産生マウスモデルを開発した。最終年度において、本モデルの腸管マイクロバイオームをβラクタム薬を投与することにより変化させ、その変化がアスペルギルス抗体の産生能についてどのように影響するかについて検討した。6週齢の雌ICRマウスに、0.5mg/ml のCefoperazone/Sulbactam(C/S)を自由飲水させ、6週間にわたり、週に2回、Aspergillus fumigatus MF367菌液を腹腔内に接種、7週目に血液中の抗アスペルギルス抗体の産生能を沈降抗体法で計測した。腸管のマイクロバイオーム解析については、7週目にマウスの便を採取、DNAを抽出し、細菌のDNAについて16S rRNA のV123領域のプライマーを用いてPCRで増幅し、PCR産物を精製したのち、次世代DNAシーケンサーを用いて解析した。マイクロバイオーム解析では、C/S非投与群(n=12)では様々な腸内細菌属が認められたのに対して、C/S投与群(n=13)では、ほぼ単独の腸内細菌属(バチルス属)に変化していた。一方、抗アスペルギルス抗体の産生能については、アスペルギルスを接種した群でC/S投与群(n=7)とC/S非投与群(n=6)で比較すると、いずれも抗体の産生が確認されたが、抗体産生能を半定量化したところ、C/S投与群(マイクロバイオーム変化群、抗体力価平均, 2.0)では、抗体産生能が、C/S非投与群(マイクロバイオーム非変化群、抗体力価平均, 2.8)に比較して低い傾向にあることが証明された。この結果は、アスペルギルス症において、腸管マイクロバイオームの変化が、アスペルギルスに対する感染防御能を変化させる可能性がることを示している。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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