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2018 年度 実施状況報告書

HIV感染者合併脳心血管疾患におけるvWFとADAMTS13の関与

研究課題

研究課題/領域番号 16K09937
研究機関熊本大学

研究代表者

宮川 寿一  熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (40347000)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワードHIV / vWF / ADAMTS13 / 動脈硬化 / HIVプロウイルス
研究実績の概要

ヒト免疫不全ウイルス(Human immunodeficiency virus;HIV)感染患者では非感染者と比較し心血管疾患(cardiovascular disease;CVD)の発症の頻度が高く、若年で心筋梗塞が認められる。頸部血管超音波検査を用いた動脈硬化病変の検索をHIV感染患者50名の評価を行い、50歳以上の患者の半数で動脈硬化病変を認め、また、40代の3人に1人、30代の患者の1名で動脈硬化性病変が認められ、若年HIV感染患者での動脈硬化の頻度の高さが示唆された。動脈硬化と相 関する因子を検討した結果、以前報告したように喫煙、糖代謝異常およびvon Willebrand因子(vWF)抗原高値が危険因子として同定された。評価を行ったすべての症例より同意を得て、血漿およびDNA抽出用の末梢血単核球を経時的に採取を行い、未治療患者において同様にクエン酸血漿および末梢血単核球を採取した。27名の患者(未治療患者10名を含む)でADAMTS抗原活性を検討したところ、ADAMTS13抗原活 性に関して抗レトロウイルス 治療(ART)施行患者と未治療者では有意差を認めなかったが、ADAMTS13抗原活性/ADAMTS13阻害因子活性を検討したところ、動脈硬化を有さない患者は動脈硬 化を有する症例および未治療患者と比較し高値である傾向にあった。頚部血管超音波検査を施行した35名の患者におけるvWFマルチマー解析で、動脈硬化を有する患者において、6~10量体以上のマルチマーの割合が統計学的有意差をもって増加していることが明らかになった。また、CD4数が200/μL未満の患者において統計学的有意差をもってvWF抗原値が経過中に高値となった。現在、HIVプロウイルス量測定法を開発し、vWF抗原やvWFマルチマーとの関連や動脈硬化との関連に関して検討を行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成30年度までの研究計画として、①HIV感染患者の血漿・血清採取、②HIV感染患者のDNA採取、③AMTS13抗原量および活性の測定、④抗ADAMTS13自己抗体の測定、⑤ vWF抗原量およびマルチマー解析、⑥HIV RNAの数コピー同定法の確立、⑦HIVプロウイルス量の測定法の確立と解析、⑧心血管疾患合併症例と非合併症例の詳細な検討、⑨動脈硬化症例での詳細な検討、⑩NOD/SCID miceを用いたエイズマウスモデルにおけるADAMTS13抗原量および活性、抗ADAMTS13自己抗体およびvWF抗原量およびvWFマルチマーの検討、⑪他の血液内皮マーカーの検討挙げている。HIV感染患者から同意を得て、血漿および細胞採取は順調に進んでいる。また、vWFマルチマー解析は終了し、頚部血管超音波検査を施行した35名の患者 において、動脈硬化を有する患者において、6~10量体以上のマルチマーの割合が統計学的有意差をもって増加していることが明らかになった(P=0.0225)。さらに今年度はvWF抗原高値症例での臨床的特徴を明らかにし、ART開始時のCD4数が200/μL未満の患者において統計学的有意差をもってvWF抗原値が経過中に高値 であることを明らかにした(P<0.01)。今年度はHIVプロウイルスについて検討を開始し、さらには多くのHIVプロウイルスは経過中に欠損や変異が入るため、複製能を有するウイルスを産生するプロウイルスの存在を同定するためにほぼ全長のプロウイルスを同定するアッセイ系を確立し、数症例ではあるがART開始前から、治療後の複製能を有する完全長プロウイルスの推移を観察している。総プロウイルスと複製能を有するHIVを産生可能な完全長のプロウイルスを同定・比較し、vWF抗原やvWFマルチマーとの関連や、動脈硬化症例での検討を行っている。

今後の研究の推進方策

ADAMTS13抗原量、ADAMTS13阻害因子活性測定症例数を増やすとともに、一般的にHIVの残存プロウイルス量は治療期間およびCD4陽性リンパ球数の最低値との相関が報告されており、また、ART開始時のCD4数が200/μL未満の患者において統計学的有意差をもってvWF抗原値が経過中に高値であることが明らかになり、今後は各症例での残存プロウイルス、とくに複製能を有するウイルスを産生可能なプロウイルスとvWF抗原値や動脈硬化との関連性に関する検討をさらに進める。また、現在、推奨されている早期のART開始のCVD予防 への効果について検討する。また、血管内皮の機能を推定するバイオマーカーとして高感度CRP、Lp-PLA2、PTX3や新規バイオマーカーとしてmicroRNA(miRNA)が報告 されており検討を開始する。さらには、HIV RNAの数コピー同定法を確立し、低レベルのHIV-1 RNAが検出される症例と全く検出されない症例での、vWF抗原量・活性、ADAMTS13抗原量、抗ADAMTS13抗体およびvWF マルチマー量の比較を行い、持続的な低レベルのウイルスによる影響に関して検討する。

次年度使用額が生じた理由

ADAMTS13抗原やADAMTS13阻害因子の測定、患者DNAを用いて複製能を有するHIVを産生可能な完全長のHIVプロウイルス測定を含めたHIVプロウイルス量の検討やおよび超遠心法などを用いて血漿中のHIV RNAの数コピー同定法の確立を予定しており、また、NOD/SCID miceを用いたエイズマウスモデルにおけるADAMTS13抗原量および活性、抗ADAMTS13自己抗体およびvWF抗原量およびvWFマルチマーの検討を開始予定であり高額の実験費が必要となる。また、国際学会での発表や論文投稿を予定しており、学会参加費、旅費および投稿料が発生する。さらには血管内皮の機能を推定するバイオマーカーとして高感度CRP、Lp-PLA2、PTX3や最近報告された新規バイオマーカーであるmicroRNA(miRNA)の検討を開始予定しており、抗体やアッセイキットなどの購入のための物品費が必要となる。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] HIV感染患者の動脈硬化の危険因子・vWF高値症例の臨床的特徴の解析2018

    • 著者名/発表者名
      宮川寿一、中田浩智、天野将之、中村朋文、松岡雅雄
    • 学会等名
      第20回白馬シンポジウム

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公開日: 2019-12-27  

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