研究課題
HIV-1はそのコレセプター利用性からCCR5を使用するR5ウイルスとCXCR4を利用するX4ウイルス,R5X4ウイルスに分類される。R5ウイルスはヒトからヒトへの感染に関与し,CXCR4を利用するウイルスは感染後期に出現し病態の悪化に関与すると考えられている。しかしながら,なぜこのようなCXCR4を利用するウイルスにスイッチするかは未だに明らかではない。そこでベトナム,ハノイの国立熱帯病病院の無治療のHIV-1感染者の血漿vRNAから,コレセプター利用性を決定しているHIV-1 gp120のV3領域をクローニングし,組換えウイルスを作製してコレセプター利用性を確認した。また個々の血漿から正常人の末梢血CD4陽性T細胞を標的としてウイルス分離を試みた。解析ができた31例のうち,26例がR5,2例がR5X4,3例がX4ウイルスで,この地域ではX4ウイルスの頻度が高いことが明らかとなった。また6例の血漿からウイルス分離に成功し,そのうち4例はR5ウイルス,2例はX4ウイルスと,やはりX4ウイルスの頻度が高いことが明らかとなった。ところがX4ウイルスが分離された症例では,血漿からクローニングされたV3のコレセプター利用性がR5であり,分離されたウイルスのV3配列は血漿vRNA由来の配列と異なっていることが明らかとなった。そこでこれらの症例で,血漿中では主要なR5配列以外に,分離されたX4ウイルスのV3配列が存在しているかどうか,次世代シークエンサーを使用して確認したところ,両症例において分離されたX4ウイルスの配列が,少ないながら存在していることが確認できた。以上からこの地域においてはコレセプター利用性の異なるウイルスが同一個体内に混在しており,このことは感染後期におけるCXCR4利用性を有するR5X4やX4の出現の機序の解明に重要な知見と考えられた。
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